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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産3社が突き進む「1400万台構想」の真相

ゴーン氏はなぜ、規模の拡大にこだわるのか。そこには、電気自動車(EV)、自動運転など、次世代自動車技術をめぐる過酷な戦いがあるんですね。

ルノー、日産自動車、三菱自動車のアライアンス3社は9月15日、2022年までの6年間の中期経営計画「アライアンス2022」を発表しました。


※カルロス・ゴーン氏(横浜の中継会場モニター)

「アライアンス2022の計画終了時には、年間販売台数は1400万台以上に、売上高は2400億ドルに達すると見込んでいます」と、ルノーと日産、三菱自動車の会長を兼務し、アライアンスを統括するカルロス・ゴーン氏は、パリ市内で開かれた記者会見の席上、いつも以上に自信に満ちた表情でそのように語りました。

それにしても、なぜ、ゴーン氏は「1400万台構想」をぶちあげたのか。

昨年5月12日に開かれた三菱自動車との資本業務提携に関する共同記者会見の席上、ゴーン氏が述べた言葉に、その理由を見ることができます。

「10年後、15年後を見て、自動車メーカーは、さまざまな技術開発に投資をしなければいけません。エンジンのラインアップも増やさなければいけないし、地理的な拡大もしていかなければいけません。相対的に規模の小さいメーカーは生き残りが難しくなるでしょう」

現在、自動車メーカーが抱える共通課題は、先端技術に関わるコストの捻出です。規模の小さいメーカーが、EVや自動運転など、新たな技術競争を戦うための資金を捻出するのは、容易ではない。

日産が2016年、三菱自動車を傘下に入れ、ルノー、日産、三菱自動車の3社連合を誕生させたのは、規模の拡大を競争力につなげるためにほかなりません。

実際、ルノー・日産に三菱自動車を加えたアライアンスのグローバル販売台数は、2016年1~12月に、996万1347万台に達しました。

規模が大きくなれば、事業を有利に展開できる。すでに、ルノー・日産アライアンスが、研究開発、生産技術・物流、購買、人事の「4機能統合」のほか、車両設計技術「CMF(コモンモジュール・ファミリー)」などを進めているのは、そのためですよね。

16年度のルノー・日産アライアンスの年間シナジーは、前年比16%増の50億ユーロでした。ルノー、日産、三菱自動車は、年間シナジーを22年までに100億ユーロ(1兆3100億円)に倍増することを目ざしています。


※中継会場の様子

指摘するまでもなく、三菱自動車がアライアンスに加わったことで、3社連合は、共同購買、物流のほか、現地サプライヤーの拡大、生産拠点の共用、共通プラットフォームの開発などで、さらなるシナジーを創出することができます。加えて、三菱自動車は、PHVを強みとするほか、ASEAN地域にも存在感がある。

いま、自動車産業でもっとも熱い話題といえば、EVをめぐる競争です。欧州や中国の環境規制の強化を受けて、フォルクスワーゲンが30年までに全車種にEVかプラグインハイブリッド車(PHV)の導入を発表するなど、大手メーカーは相次いで電動化の方針を発表しています。

ご存じのように、日産は2010年12月、世界に先駆けて「日産リーフ」を発売しました。この10月には、「新型リーフ」が発売されます。しかし、EVの価格はまだまだ高いといわれていますし、技術的な課題が残されているのも事実です。

つまり、EVだけ見ても、巨額の開発費用が必要になってくる。

他社の追い上げをかわしつつ、EVの「ナンバーワンの座」を守りきるには、多額の開発費用が求められる。その原資を3社によるシナジー創出で賄おうというわけですね。

EVに関していえば、3社連合は、22年までに100%EVを12車種発売するとともに、航続距離を600キロ(NEDCモード)まで伸ばす計画です。

「1400万台構想」は、果たして実現するか。その成否を決めるのは、アライアンスの具体的な成果です。つまり、ひとえにアライアンスを統括するゴーン氏の手腕にかかっているといえます。

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