パナソニックは、自動車部品メーカーとして、着々と実績を積みつつあります。現に、パナの自動車部品がトヨタのミニバン「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」などに納入されることが決まったようです。これを機に、パナは自動車部品メーカートップ10入りに向かっていくと見ていいのでしょうか。
※パナソニック東京汐留ビル
振り返ってみれば、パナ社長の津賀一宏氏は、「パナソニックは将来、自動車部品メーカーになるかもしれない」と、2013年に開かれたCESのオープニング基調講演で語りました。
この発言は、当時、衝撃をもって迎えられましたよね。
指摘するまでもなく、津賀氏がそう発言したのは、車の電動化、自動運転、コネクテッドカーなど、車の進化が背景にあります。
とはいえ、パナソニックの自動車部品事業の概要は、米テスラモーターズと共同で、米ネバダ州に世界最大級のリチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」を建設したことのほかは、いま一つ、その全容が見えませんでした。
そう思っていたところ、「21年度には、車載事業の売上高2兆5000億円を実現し、自動車部品メーカートップ10入りに挑戦します」という発言が、17年5月30日に開かれたパナソニックIRデーの席上、パナソニック・オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)社長の伊藤好生氏から聞かれました。
では、売上高2兆5000億円をいかにして達成するのか。じつは、核となる商品の一つが、ようやく明らかにされました。フィコサとの協業開発による「電子ミラー」です。
じつは、布石は着々と打たれてきたんですね。パナは15年6月、スペインの自動車部品大手フィコサ・インターナショナルと資本業務提携を行い、次世代コックピットシステムやADAS(先進運転支援システム)などで協業を開始。2017年3月には、フィコサの株式を20%追加取得し、連結子会社化しました。
フィコサを連結したのは、フィコサのミラー技術とパナのカメラや液晶技術を融合し、シナジーを追求するためなんですね。
パナとフィコサの協業開発商品の第一弾、「電子インナーミラー」は、広角レンズを搭載したカメラで後方の広い範囲を映すことができるため、通常のインナーミラーに比べて視野角が広い。また、リヤウインドーの内側に配置したカメラからの映像を表示するため、後席の同乗者が移り込まず、後方を確認しやすいのが特徴です。
さらに、高感度カメラ技術によって、夜間やトンネル内でも見やすい画像を映し出すことが可能です。
パナは9月下旬から、この「電子インナーミラー」をトヨタのミニバン「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」のほか、「ランドクルーザー プラド」向けに量産出荷する計画なんですね。
今後、パナは「電子インナーミラー」で培った技術をさらに進化させ、自動駐車システムや自動運転などで強みを発揮していくと見ていいでしょう。
電動化や自動運転技術の進歩などによって、自動車産業は現在、100年に1度といわれる構造変化に見舞われています。とりわけ、EVの普及は、自動車部品産業に大転換を迫るといわれています。
自動車産業の構造変化は既存の自動車部品メーカーにとっては脅威ですが、パナにとっては、ビッグチャンスです。自動車産業に食い込むまたとないチャンスだからです。
パナがこの追い風をどこまで活用し、ビジネスの幅を広げることができるか。それは、パナが10年先、20年先の成長力を築くうえでの大きなチャレンジといえるでしょうね。