トヨタが量産型EVの開発に向けて、いよいよ本格的に動き出しました。ただし、EVの開発の後れを取り戻すには、トヨタ一社では無理だったんですね。
※トヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長(2017年8月4日撮影)
トヨタ自動車とマツダ、デンソーは28日、電気自動車(EV)の開発のための新会社設立を発表しました。
すでにトヨタとマツダは、8月に資本提携し、EVの共同開発などで合意していましたが、今回、デンソーを加えて、量産型EVの開発を加速する背景には何があるのでしょうか。
よく知られるように、トヨタは97年に世界初のHV「プリウス」を発売しました。「プリウス」をはじめとするHVは大ヒットし、累計販売台数は900万台を超えました。
ところが、その成功体験がアダとなったというべきか。もっといえば、HVへの過信がEVの遅れにつながったというべきか。HVを高く買い過ぎたあまり、EVに投資すべきタイミングを逃したといえるのではないでしょうかね。
HVの電動化技術を応用すれば、EVは簡単につくれるといわれます。本当にそうなのか。実際、トヨタの技術陣もそのように考えていたのは間違いないでしょう。
じつは、トヨタはEVをやらなかったわけではありません。社長の豊田章男氏は、技術陣に「EVをやらなくていいのか」といったことがあります。ところが、技術陣から返ってきたのは、「EVなんて、いつでもできます」という言葉だったといわれています。
しかし、EVへの対応は、口でいうほど簡単ではない。熱エネルギーのすり合わせやバッテリー回りのコントロールなど、多くの課題があるんですね。
豊田章男氏は、2010年5月、半ば社内の反対を押し切る形で、米国のEVベンチャー、テスラ・モーターズと業務・資本提携し、北米で「RAV4」の開発をスタートさせました。
ところが、テスラとのEV開発はうまくいかず、14年、トヨタはテスラとの提携を解消します。豊田章男氏の肝いりでスタートしたEV開発は、志半ばで頓挫した経緯があるんですね。
しかしながら、ここにきて、EVの開発が待ったなしの状況になりました。背景には、米カリフォルニアや中国の環境規制の強化があります。まだまだ先のことと見られていた本格的なEV時代は、思った以上に早くやってきた。
いつでも簡単にEVをつくれると傍観しているわけにはいかなくなったわけですよ。
トヨタ、マツダ、デンソーの3社は、EV開発の新会社「EVシー・エー・スピリット」を設立し、軽自動車から乗用車、SUV、小型トラックまでの幅広い車種のEVを効率的に開発できる体制をつくる計画です。
また、トヨタの「TNGA」、マツダの「一括企画」「モデルベース開発」、デンソーの「エレクトロニクス技術」を持ち寄ることで、開発手法そのものを見直す方針です。
果たして、トヨタ、マツダ、デンソーの3社による新会社は、EVの遅れを取り戻すことができるのか。
「EVシー・エー・スピリット」には、トヨタが90%、マツダとデンソーがそれぞれ5%ずつを出資します。
EVの遅れを取り戻すことができるかどうかのカギは、トヨタというよりも、意外にもマツダとデンソーが握っているといえるでしょうね。