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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東京モーターショーをどう見るか

開催中の東京モーターショーは、28日から来月5日まで、一般公開されています。まだ、これから中盤というところですが、プレスデーに会場を訪れた所感を述べてみたいと思います。


※東京モーターショー会場入口(26日)

近年、東京モーターショーに関しては、悲観的な意見が多い。確かに日本の自動車市場は縮小傾向にあり、メーカーから見た市場としての魅力は中国市場などに比べて薄い。人口減社会を迎えた成熟社会日本では、もはや仕方がないこととはいえ、北米ビッグ3のGM、フォード、フィアット・クライスラー、さらにフェラーリをはじめとするイタリア勢は出展していないと聞けば、やはり寂しい。そのうえ、開催直前に日産やスバルの不祥事が発覚。これは、一大イベントに水を差しかねない問題です。

では、会場は寂しいか、しらけているかというと、例えばプレスデーについていえば、かなりの熱気でしたね。朝7時の段階で、7時半に開くプレスルームの入口には長蛇の列ができていた。例年以上にマスコミの関心が高いように感じましたよ。

ご存じの通り、自動車産業には、いま、電動化、自動化、共有化、さらにコネクテッドなど、多くの変化の波が押し寄せています。製造業全体が、IoTとか、インダストリー4.0などと騒がれていますが、これらの大変革をリードするのは、間違いなく自動車産業です。

したがって、自動車メーカーや部品メーカーだけでなく、電機メーカーや素材メーカーなどにとっても、今後の方向性を見極めるうえで、自動車産業を押さえることは重要です。マスコミの関心が高まるのは、当然ですね。


※レクサスブースのメディアの人垣(25日)

さて、集まっているマスコミの顔ぶれを見てつくづく感じたのは、外国人記者が増えたことです。近年の東京モーターショーは、上海モーターショーにアジアナンバーワンの地位を奪われ、淋しい限りで、外国メディアの注目度は低下する一方でした。

ところが、今回は、少し事情が変わりました。というのは、海外メディアがいつも以上に目についた。メキシコ人やインド人のグループなど、とくに新興国のメディアが多いように感じましたね。海外メディアが戻ってきたようにも感じました。

なぜでしょうか。少しその背景について考えてみたいと思います。展示されているクルマは、各社、電動化や自動運転、AIなどの技術を前面に打ち出しています。AIを応用して人を理解する技術や自動運転などを搭載したトヨタの「コンセプト‐愛i」、航続距離600㎞、完全自動運転モードではハンドルが格納される日産のEV「IMx」など、まさに未来の乗り物です。


※トヨタの「コンセプト‐愛i」


※日産コンセプトEV「IMx」

一部には、東京モーターショーはSFチックだとか、奇抜だなどという批判もあるようですが、そんなことは少しもありません。出展者たちが示すクルマの未来像は斬新であり、先進性があります。

実際、自動運転や電動化技術などにおいて、日本の自動車メーカーや部品メーカーは、ドイツ勢と競いつつ、いまなお、世界でも最先端の技術を有しています。例えば、電動化に必須の車載用電池の素材は、日本企業が圧倒的に強い。

むろん、楽観視はできません。しかし、東京モーターショーには、いまだ世界を惹きつける魅力があるのは確かです。いや、日本は電動化などに遅れているという人もいますが、必ずしもそうではありません。自動車の未来を語るとき、日本の最先端の技術、あるいは日本メーカーの動向を抜きにしては、考えられないのが現状です。

世界の自動車メーカーや関連企業は、日本メーカーやサプライヤーが提示する最新技術の動向、開発姿勢などを確かめ、今後の方向性や技術展開を見極めなければ、ロードマップを描くことは難しいでしょう。

日本のモノづくりの危機がいわれています。製造業が大きく変わるときだからこそ、日本企業は、最先端の技術を取り入れつつ、いま、褌を締め直すべきなんですよ。むろん、危機感を持たなければいけません。とにかく、東京モーターショーで、日本の技術の現状に、触れてみてほしいと思います。

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