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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタの新型パワートレーンはなぜすごいのか

トヨタは26日、CVT(無段変速機)、2リットル直列4気筒エンジンなど、新しく開発したパワートレーン5機種を発表しました。トヨタの新しいクルマづくりの思想「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」に基づくパワートレーンの刷新です。


※トヨタパワートレーンカンパニーチーフエンジニアの山形光正氏(写真左)

「2030年時点でも90%のクルマに内燃機関が搭載されます。そのため、エンジンやトランスミッションを進化させることも、CO2排出量を減らし、環境に貢献できることだと考えています」と、新型パワートレーンの技術説明会の席上、パワートレーンカンパニー、チーフエンジニアの山形光正氏は語りました。

世界各国の環境規制の強化を受けて、EVの開発競争が激しさを増しています。トヨタも2020年以降、EVを本格展開しますが、すべてのクルマが、排気ガスを一切出さないゼロエミッションビークルになるまでには、まだ時間がかかると、トヨタは考えているんですね。

実際、広く世界に目を向ければ、従来型のガソリン車の市場もまだまだ小さくはありません。HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)にしても、エンジンを搭載しています。つまり、排気ガスを排出するわけですね。となると、各国の環境規制に対応するためには、パワートレーン全体で最適な燃費を達成するとともに、CO2排出量を削減することが、これからも重要になってきます。

この日、説明会場には、トヨタの新しいクルマづくりの思想TNGAに基づいて開発された新型の無段変速機(CVT)や2リットル直列4気筒エンジンなどが展示されました。

※2.0Lダイナミックフォースエンジンの気筒部

TNGAは、クルマのプラットフォーム(車台)をサイズごとに統一し、設計や部品を共有化して、コストの削減を図る、いわゆるモジュール開発です。

2015年12月に発売された4代目「プリウス」が、TNGAを適用して開発された第一号です。

トヨタは、TNGAによって、クルマを骨格から変えるとともに、運動性能の向上を図り、クルマの基本性能である走る、曲がる、止まるをレベルアップしてきました。

加えて、環境性能と走行性能の同時達成を目標に、パワートレーンの刷新を図ってきました。

つまり、クルマのプラットフォームの刷新とパワートレーンの刷新を同期させ、その中でエンジンの燃焼室やシリンダー設計を統一し、気筒容積と気筒数の組み合わせでエンジンバリエーションを構成。それによって、エンジンの開発種類を約40%低減するなど、開発の効率化を実現するとともに、生産性向上も達成してきたんですね。

「TNGAに基づくモジュール開発によって全19機種、37バリエーションを2017年からの5年間で一気に導入します」と、山形氏は語りました。

さて、今回発表された新しいパワートレーンですが、エンジンは2.5リットルダイナミックフォースエンジンを改良して2リットルに展開。それに、新開発のダイレクトシフトCVT、6MT、2リットル用のトヨタハイブリッドシステムを組み合わせています。

とりわけ、注目したいのは、CVT(無段変速機)です。新たに発進用ギアを採用して、低速域の伝達効率を大幅に改善し、アクセル操作に応じたダイレクトでスムースな走りを実現しています。また、燃費性能を従来と比べて6%向上させています。

「ダイレクトシフトCVTの画期的な嬉しさは二つあります。一つは、発進性能の向上です。高効率なギアを使用することによって力強くスムースに加速します。もう一つは、燃費性能の向上です」というのは、山形氏のコメントです。

トヨタは、新型パワートレーンを日本、中国、北米、南米、欧州で順次、現地生産し、世界市場の主力商品である排気量2リットル車に載せる計画です。

また、TNGAによって開発されたパワートレーンの搭載車を、2023年には、トヨタ単独の年間販売台数の約80%に拡大。これによるCO2排出量の削減効果は15年比で18%以上になる見込みです。

各国の燃費規制、排ガス規制は今後、ますます厳しくなることが予想されます。新しいパワートレーンによる対応が期待されます。

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