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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナの綱島サスティナブル・スマートタウンとは

パナソニックは一昨日、横浜市港北区の旧松下通信工業の工場跡地に、「綱島サスティナブル・スマートタウン(TSST)」を“まちびらき”したと発表しました。


※パナソニック社長の津賀一宏さん

パナソニック社長の津賀一宏さんは、プレス発表会の席上、次のように挨拶しました。
「綱島SSTは、職場、住宅、商業施設がコンパクトに集結したミクスドユースの次世代都市型スマートタウンです。この特徴を生かして、エネルギーやセキュリティはもちろん、モビリティのシェアリング、センシングによるまち全体の見える化など、都市ならではのテーマを抽出し、新たなソリューションの提供に向けて、パートナーの皆さまとともに挑戦を続けて参ります」

パナソニックのスマートタウンといえば、藤沢市にある「藤沢サスティナブル・スマートタウン(FSST)」がよく知られています。綱島SSTは、藤沢に次ぐ、パナソニックのスマートタウン第二弾なんですね。藤沢SSTが「郊外型」だったのに対し、綱島SSTは「都市型」です。実際、藤沢は戸建て住宅が多いですが、綱島には戸建て住宅はないんですね。

では、何があるのか。綱島SSTには、ユニーの運営する商業施設「アピタテラス横浜綱島」、米アップル社の技術開発施設、慶應義塾大学の国際学生寮、野村不動産の集合住宅「プラウド綱島SST」のほか、タウンマネジメントセンター、タウンエネルギーセンター、水素ステーションなどが設置されています。

運営に携わるのは、パナソニック、野村不動産、ユニー、JXTGエネルギー、慶應義塾大学、綜合警備保障、サンオータス、ホンダ、大林組の8団体。綜合警備保障はセキュリティ、ホンダは燃料電池車のカーシェア、サンオータスはカーシェア、レンタカー、サイクルシェアなど、まちを活用し、先進的な実証を継続的に実施していく計画です。

また、大林組は3Dまちづくりプラットフォーム「SCIM(スマート・シティ・インフォメーション・モデリング)」を構築し、まち全体をコンピュータ上に3Dで再現して、パナソニックの画像認識やセンシングの技術などを組み合わせ、まち全体の環境、人の流れ、人数や性別などの属性の見える化に取り組みます。温度、湿度、花粉などのほか、点検記録やエネルギー情報もマネジメントする。まち全体をあらゆる面から「見える化」するプラットフォームなんですね。2年間に渡ってデータを蓄積、検証し、新しいタウンサービスを検討します。

綱島SSTの目玉の一つは、水素をはじめ、新エネルギーを積極活用したエネルギーマネジメントでしょう。そして、もう一つあげるならば、タウンマネジメントセンターに設置されたオープンイノベーション空間「イノベーションスタジオ」と、国際交流・地域交流、知の交流拠点「エクスチェンジスタジオ」でしょう。

「エクスチェンジスタジオ」を活用して、パナソニックと慶應義塾大学様を中心とする「綱島SSTラボ」を創設しました。学生や地域を含めて、まちのイノベーションアイデアを事業化する活動です。綱島地域全体の社会課題を、エネルギー、セキュリティ、モビリティ、コミュニティ、ウェルネス、ファシリティの6つの観点で抽出して新たなソリューションを生み出すといいます。

「ともすればアイデアだしに終わってしまうところもあるわけですが、私たちはこの町を活用して実証し、そして事業化まで行う一連のステップをパッケージ化することによって、継続化し、新しい事業を生み出す。これを繰り返してサスティナブルな事業活動を展開していきたいと思います」
と、パナソニック執行役員の井戸正弘さんはコメントしました。

それにしても、家電メーカーのイメージのなお強いパナソニックが、なぜ、「まちづくり」なのでしょうか。

いま、日本は、少子高齢化をはじめとする社会課題が山積しています。サスティナブル、つまり持続可能な社会を実現するため、パナソニックは、どんなソリューションを提供できるのか。さまざまな業種の企業と共創して、いかに「空間価値」を高められるのか。それを探ろうとしているんですね。


※参画する企業の代表者ら

例えばエネルギーマネジメント、セキュリティ、モビリティ、ウェルネスなど、パナソニックが培ってきた技術やサービスを、まちという空間に実装し、データを蓄積する。それを検証して、社会課題解決型のサービスソリューション事業を生み出し、ビジネスとして展開する。つまり、SSTは、技術とニーズの擦り合わせの場といえるかもしれません。

一昨日の会見では、第三弾のスマートタウンとして、大阪府吹田市に、2022年の“まちびらき”を予定して、健康や介護をテーマとした新たなSSTを開発することも発表されました。吹田市の北大阪健康医療都市構想と連携するといいます。

パナソニックは、今後、SSTを国内外に水平展開する計画です。パナソニックは、社会課題を解決するソリューション企業に脱皮できるか。SSTに、その成否がかかっています。

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