12日、日産は横浜で、タクシー市場への取り組みに関する説明会を行いました。
日本の法人タクシー市場は、リーマンショックの2008年度以降縮小傾向にあり、車両総数も減少傾向にあります。
※日産日本フリート事業本部副本部長の春山美樹さん
「2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えたユニバーサルデザインタクシーの増加という戦略もあり、近年、タクシーの全需(新車の需要)は増加傾向に転じています」
と説明会の冒頭で語ったのは、日産日本フリート事業本部副本部長の春山美樹さんです。
タクシー車両のなかでも、LPガスを燃料とするセダンタクシー以外の車両の比率が高まっているといいます。事実、規制緩和によって、事業者の裁量でタクシーとして利用できる車種は増えました。
近年、個人タクシーを中心として、多様な車種を見かけるのはそのためです。この傾向は、今後も続くと予想されます。
日産もまた、12年12月に、ユニバーサルデザインタクシーとして、NV200タクシーを発売しました。ミニバンタイプの車両で、広々とした車内が特徴の、高齢者や障がい者、観光客などのニーズをいち早く取り入れた車両です。
説明会の当日には、熊本県のタクシー会社「おしろタクシー」に、日産から感謝状が贈呈されました。「おしろタクシー」は、先月8日、16台の全車両にEV(電気自動車)の新型「リーフ」を導入したんですよね。
※新型「リーフ」に乗って贈呈式に登場した「おしろタクシー」社長の込山浩憲さん
タクシー車両をEVに変えるメリットは、何点かあります。まずは、毎月のメンテナンスと燃料費の削減です。LPガスのタクシー車両のメンテナンス費や燃料を大幅に削減でき、初期投資とバッテリー交換費用を考えても、割安にタクシーを運用することができます。
私は以前、テスラのEV「モデルS」や「モデルX」をハイヤーに使う日の丸リムジン社長の富田和宏さんに話をうかがったことがあります。「モデルS」のハイヤーでは、ガソリン車と比較して、燃費は月に15万円ほど安いと話していましたよ。
EV車両では、タクシーの利用者もまた、EVならではの静粛性や安定した乗り心地を楽しむことができます。実際、「おしろタクシー」のグループ企業「菊陽タクシー」は、12年に全国で初めて先代の「リーフ」を12台全車導入していますが、その評判も上々といいます。
「地方でタクシー事業を行っていると、ガススタンドまで往復1時間掛かることもありますが、EVなら自前で充電器を設置でき、運転手さんの空き時間にも充電できるので非常に効率的です。それにゼロエミッションにも貢献できます。ドライバーさんの高齢化も進んでおり、新型『リーフ』の衝突安全性機能や(ワンペダルで加減速ができる)eペダル、360度カメラなど、安全運転に関してもドライバーさんの負担軽減につながると考えました」
と、「おしろタクシー」社長の込山浩憲さんはコメントしました。
自動車業界は、いま、電動化、自動運転、コネクティッド化、シェアリングなど「100年に一度」の大変革期といわれますが、タクシーはその変革の影響をモロに受けます。EVは、自動車の変革のなかで、次世代タクシーの車両として、選択肢の一つなんですね。
タクシー車両といえば、トヨタは昨年10月、コネクティッド機能のついた「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」を発売し、各タクシー会社が導入を進めています。タクシー業界では、車両の進化だけでなく、日本交通グループのジャパンタクシーの「全国タクシー」を筆頭に、ウーバーやLINEなど配車アプリは乱立状態です。トヨタは2月、ジャパンタクシーと、タクシー事業者向けのサービスの共同開発に基本合意し、約75憶円の出資を決めています。
電動化にだけでなく、コネクティッド化やシェアリングサービスの拡充に向けて、モビリティが生み出すデータをめぐる争いは、IT企業や自動車メーカーの間で熾烈化しています。大量の車両を長距離、長時間にわたって走らせるタクシー会社は、膨大なデータを生み出すことから、その渦中に巻き込まれているんですよね。
最終的に重要なのは、ユーザーの利便性です。2020年の東京オリンピック・パラリンピック、さらにその後の社会の変化までを見据え、タクシー会社、タクシーの利用者にとって便利な車両、アプリケーション、サービスの開発が求められています。