パナソニックが7月31日に発表した第1四半期決算は、売上高が前年同期比7.7%増の2兆87億円、営業利益は同19%増の1000億円でした。営業利益には、土地売却益の200億円が加算されていますが、まずまずの滑り出しではないでしょうか。増収増益の勢いは昨年から続いていて、今年度の通期見通しは据え置いています。
※パナソニックの梅田CFO
さて、2012年に社長に就任した津賀一宏さんは、注力する事業として「車載」と「住宅」をあげました。
「車載」については、2018年度に達成目標だった車載事業の売上高2兆円は2019年度に持ち越されていますが、2021年度には、2兆5000億円の目標を掲げています。会見で恒例の質問、車載電池に関する「テスラ・リスク」も、テスラ「モデル3」の生産台数が6月末に週5000台に到達し、予断を許さないながらも、解消が見えてきています。
では、「住宅」はどうなのか。いまひとつパッとしない印象です。もちろん、昨年のパナホームズの完全子会社化をはじめ、木造住宅参入や民泊参入などのトピックはありますが、「車載」でいう巨大電池工場「ギガファクトリー」に並ぶような、インパクトの強い事業は見当たりませんよね。
パナホームは、今年4月にパナソニックホームズと社名変更し、パナソニックの社内分社の一つ、エコソリューションズ社傘下で、住宅事業を手掛けています。7月31日の会見では、記者から「パナソニックホームズは赤字では」という質問がありました。CFOの梅田博和さんは、「開示していない」と断りつつ、次のようにコメントしました。
「伊東という者が、エコソリューションズ社で海外の住宅を担当するようになりまして、もちろん、電材やスイッチなどもやるんですが、家関連も、アジアを中心に少しずつトライアルしていっています」
私は昨年、この伊東大三さんに、2度ほどインタビューする機会がありました。彼は、もともと松下電器貿易出身で、イギリス松下電器出向、アジア大洋州本部営業所長などを経て、パナソニックタイ社長、パナソニックインド社長を歴任した変わり種です。会社人生の半分以上を海外で過ごしている。インドに派遣された08年当時、200億円に過ぎなかったパナソニックのインド市場の売り上げを、17年に10倍の2000億円にまで育て上げた立役者です。
彼は現在、本社常務執行役員で、14年からインド・南アジア・中東阿総代表を務めているほか、昨年からエコソリューションズ社上席副社長海外担当を務めています。
インタビューの際には、海外事業の要諦として「商品」「マーケティング」「経営」の三つのローカライゼーションを唱える一方、現地駐在員に対しては、「ケチにならずに現地の美味しいものを食べ、病気には臆病になれ」なんていっていましたよ。社内では、若手有志を集めて「伊東塾」もやっているとか。まあ、ちょっと、パナソニックの平均的人材の枠からは外れた、ぶっ飛んだ人です。
ドメスティックでパっとしない住宅事業を大きく変えられるとしたら、伊東さんしかいないのではないか。パナソニックの住宅事業の未来に、伊東さんが大なり小なり影響を与えるのは、確実だと思いますね。