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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝の四半期決算は〝稼ぎ頭〟不在が浮き彫り

いまさら指摘しても詮無いことですが、稼ぎ頭だった東芝メモリを売却した東芝には、新たな収益の柱が見当たりません。社会インフラ、エネルギー、電子デバイス、デジタルソリューションの主要4事業を柱にどのような再生の道筋をつくっていくのか。しばらくは苦戦を強いられそうですね。


※東芝2018年度第1四半期決算説明会の会場

東芝は8日、2018年4~6月期の業績を発表しました。連結売上高は、前年同期比7%減の8422億円、営業利益は同94%減の7億円、純利益は前年同期の503億円から約20倍増えて1兆167億円になりました。

純利益が大きく増えて1兆167億円となったのは、半導体子会社だった東芝メモリの売却益9700億円を計上したためです。

営業利益の落ち込みは、稼ぎ頭の不在をあらためて浮き彫りにしたといえるでしょうね。

エネルギーとシステムは赤字で、半導体関連は減益です。米LNG(液化天然ガス)事業は巨額の損失リスクを残したままです。原発事業では英子会社の売却交渉が難航しています。

東芝は、今後、何で稼いでいくのか。

東芝は、今後5年間の経営計画として「東芝nextプラン」を年内に発表する予定でしたが、これを前倒しし、11月に発表すると公表しました。内容は、基礎収益力の強化策と事業別の中期戦略、そして、数値を含む計画です。

「ハード主体の売りではなく、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)を含めたリカーリングビジネスで収益を拡大していきます。それが、中期経営計画『東芝nextプラン』のあらすじです。そのための人材も入れています」と、代表執行役専務の平田政善氏は、8日の決算説明会の席上、語りました。

リカーリングビジネスとは、商品を売って終わりではなく、売った後もサービスなどを利用してもらうことで、継続的に収益を上げるビジネスモデルです。すでに、ソニーがゲームを主軸とした同ビジネスへの転換で収益を上げています。

東芝もまた、既存の製品にIoTやAIを組み合わせて、継続的に稼げるリカーリングビジネスへと転換する計画ですが、果たして収益向上につながるかどうか。

その一方で、昨年の増資を引き受け、東芝の新たな株主となった海外ファンドからは、7000億円の自社株買いを迫られているようです。

業績回復がともなわなければ、さらに圧力が強まることが考えられますが、そう簡単に収益性をともなう成長はかないません。

「負の清算」がほぼ終わった東芝にとって、いよいよこれからが事業の立て直しの本番となります。

19年3月期の業績予想によると、売上高は3兆6000億円と見込んでいます。ピークは08年3月期の7兆6000億円でしたから、半分以下に減少したことになります。

もはや重電の雄の面影はありません。ただ、昔の夢を追っても、東芝の再建ができるものではありません。ひとまわりもふたまわりも規模が縮小したなかで、コツコツと上を目ざしていくしか道はないと思います。

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