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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニックは「くらしアップ―デート業」となる

昨日も触れた通り、パナソニックは10月30日から11月3日までの5日間、東京国際フォーラムで、創業100年を記念する「クロスバリューイノベーションフォーラム」を開催しています。

パナソニックは、過去100年間にグローバル企業へと成長しました。しかし、これまでの100年間と次の100年間では、おそらく、消費者の求める商品やサービスは、まったく異なります。モノづくりも、ビジネスのルールも異なる。そのなかで生き残るための戦略を、海外を含むグループ会社や社員、株主、ビジネスパートナー、販売店、さらに消費者へ、しっかりとアピールしなくてはいけません。

社長の津賀一宏さんは、昨日の基調講演の席上、「パナソニックは、『くらしアップデート業』を営んでいる会社です」と、新たなメッセージを発信しました。


※社長の津賀一宏さん

「くらしアップデート業」という言葉は、必ずしも強いインパクトのある言葉とは思いませんが、最近の若い世代は、スマートフォンやパソコン、アプリなどを、日々アップデートすることに慣れていますから、身近な言葉という意味では、パナソニックらしいかもしれませんね。

いずれにせよ、「くらしアップデート業」は、「クロスバリューイノベーション」に次いで、津賀さんの改革を象徴し、これからのパナソニックを牽引していくキーワードになるでしょう。

津賀さんは講演のなかで、重要なのは、「アップグレードではない」ことだと説明しました。かつて、消費者をマスととらえていた時代には、メーカーは「アップグレード」を競い合った。
「四つの機能がついた家電より、五つの機能のついた家電がいいとされた時代でした。でもいまは違います。一人ひとりの価値観が解放されています」
と、津賀さんはいいます。

多様性がいわれますが、多様性とはつまり、ダウングレードが必要なときや、人もいるということです。例として、若いときには加速のいいクルマに乗りたかった人も、老いてからはスピードは重視しなくなるという話を、津賀さんはあげました。

つまり、「くらしアップデート業」の本質は、一人ひとりの顧客に対して、その人にとっての最適化を実現することなんですね。


※壇上で講演する津賀さん

パナソニックが取り組むアップデートの展開の一例としてあげたのが、ビジネスイノベーション本部長の馬場渉さんらが取り組む「HOME X」です。「HOME X」の定義は難しいですが、いわば、くらしのプラットフォームですね。

具体的な話は機会を改めることにして、コンセプトについていえば、スマートフォンやテスラなどの自動車が、購入後もアップデートを重ねるように、家をアップデートする。これまでの家は、買った時が最高で、あとは経年劣化でした。しかし、「HOME X」を搭載した家は、暮らしのなかでアップデートされ、暮らす人に合わせて最適化していく。自動車産業では、「クルマがスマホになる」といわれますが、その意味でいえば、「家がスマホになる」んです。使うことで、ユーザー価値が増す家というコンセプトです。

今日、ビジネスのルールは変わりつつあります。大量生産大量消費から少量多品種、所有からシェアリング、また消費者の嗜好は多様化し、カスタマイズのニーズが増えている。新ルールのもとでは、モノや会社の規模よりも、時代や消費者に合わせて、的確に変化していくことこそが重要になります。

その意味で、パナソニックが「くらしアップデート業」を営むためには、パナソニックもまた、世の中の変化に適応し、アップデートし続けていかなければならない。自らが変革し続けることによってしか、「くらしアップデート業」にはなれません。

さて、次の100年、パナソニックはどこまでくらしをアップデートできるか。強みを生かしつつ、自ら変わり続けることができるか。挑戦は続きます。

津賀さんによるパナソニックの近年の改革については、今月上梓した拙著『パナソニック、「イノベーション量産」企業に進化する!』を、ぜひご一読ください。

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