やや旧聞に値しますが、11月2日、パナソニックは、世田谷区駒沢に展示されたモデルハウス「カサートアーバン」で、「HomeX」の説明会を行いました。「カサートアーバン」は、11月3日に発売された都市型のIoT住宅です。
「HomeX」とは、「ホーム・エクスペリエンス」の略です。パナソニックが持つ家電、住宅設備、建材、AV機器、要素技術などを横串で刺し、AI、IoT、ロボティクスといったデジタル技術を使って、新しい住空間体験を提供しようというプロジェクトです。
※「カサートアーバン」
パナソニックは現状、照明、空調、テレビなどのスイッチ、美容家電やキッチン家電など、多くの顧客接点をもちますが、これらは、現状はバラバラでルールがなく、使いにくい状態になっている。「HomeX」は、これらのタッチポイントを統合し、一つのインターフェースにまとめ、生活を「人間的」にする、つまり、より快適にしようという試みなんですね。
「カサートアーバン」には、玄関、リビングルーム、洗面所、キッチン、寝室など、家のなかに「HomeX ディスプレイ」と呼ばれる「タッチポイント」が複数設置されています。一つのインターフェースで、ドアホンや洗濯機、照明、シャッター、音響機器など、多くの家電や機器を操作することができます。わかりやすくいえば、ドアホンが鳴れば、どこでも近くのディスプレイで対応できる。調理中に、洗濯が終わったかどうか、洗面所まで確認にいかなくていい。
※「HomeX ディスプレイ」
さらに、外出や起床、就寝などのシーンを事前に設定し、ワンタッチで実現できます。例えば、「HomeX ディスプレイ」の「おはよう」シーンをタッチすれば、シャッターが開き、照明がついて音楽が流れる。家電や機器が連携して、快適なシーンを実現します。
将来的には、「HomeX」が、家族がいつも見ている番組を録画し、教えてくれたり、ディスプレイ上のワンタッチでテレビがつき、録画した番組が再生される。また、「HomeX」が、気象情報から服装を提案してくれたり、洗濯のタイミングを教えてくれたり、使いこなせていない家電の機能を提案してくれたりもする。
近年、AIスピーカーに接続できる家電など、つながる家電は増えていますが、同様に、「HomeX」も連携できる家電や機器は、どんどん増える計画です。APIを200以上公開していて、多くの家電メーカーなどがこれを利用して対応を図っているといいます。
さらに、「HomeX」自体がクラウドに接続し、アップデートを重ねます。パナソニック社長の津賀一宏さんは、パナソニックを「くらしアップデート業」と定義しましたが、その意味で「HomeX」はど真ん中です。
スマートフォンやテスラなどの自動車が、購入後もアップデートされ続けるように、家の機能もアップデートするのが当たり前になるかもしれません。コネクティッド・カーならぬ、コネクティッド・ハウスですよね。暮らす人に合わせてカスタマイズされ、家というより、生活そのものが、そこに住む人に最適化されていくわけです。
今後、「HomeX」が、社会にどの程度浸透していくかは未知数です。IoT家電の普及や生活のスマート化は、いまや国内より中国が圧倒的に進んでいますから、日本よりは中国の富裕層、あるいはシリコンバレーでテスラに乗っているような、先進的な層に支持されるのではないでしょうかね。
「HomeX」の挑戦は、始まったばかりです。