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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ゴーン氏解任後の日産は、大丈夫なのか?

このたびの“ゴーン騒動”をめぐって、テレビやラジオなどでいろいろ発言しましたが、いま考えていることを少しまとめてみたいと思います。


※カルロス・ゴーン氏

日産は、今日の取締役会で、カルロス・ゴーン氏の会長職と代表取締役、またグレッグ・ケリー氏の代表取締役の解任を決議する予定です。ゴーン氏の解任後の会長職は、暫定的に社長兼CEOの西川廣人さんが兼務する方針といわれています。

本当に解任が決まれば、一種の「クーデター」成立となりますが、果たして、そのあとの日産は大丈夫なんでしょうかね。

今回のゴーン逮捕は、日産の生え抜き経営陣によるゴーン外しの「クーデター」、という説があります。まあ、「クーデター」といってもいいのかもしれませんが、私はどちらかというと、内部告発をキッカケに、ゴーン独裁への不満が噴出した結果の“反乱”だと見ています。

近年、日産社内では、ゴーン独裁体制に対して不満がたまっていたのは事実です。国内市場の軽視、ルノーとの関係、ゴーン氏の金銭への強欲さ……。フツフツと鬱積していた不満が、内部告発を機に爆発した、という構図ではないでしょうかね。

西川さんは今回、日産CEOとして、ゴーンさんを斬る決断に踏み切った。しかし、この「クーデター」が成立するのか、また、コトが日産の思い通りに進むかどうかは、まだ、まったく見えません。

まず、簡単に話を整理します。ゴーン氏は、ルノーの会長兼CEOと、日産と三菱自動車それぞれの代表取締役会長を兼任し、さらに、ルノー・日産・三菱自動車をまとめるアライアンスのCEOを務めています。アライアンスCEOは、ルノーのCEOが兼務することになっているんですよね。

さらに複雑なのは、ルノーがフランスの国策会社であることです。ルノーの筆頭株主はフランス政府で、ルノーの議決権を持っています。

今年2月、ルノーはゴーン氏の会長兼CEO続投を決定しました。このウラには、フランス政府とゴーン氏の間で交わされた〝密約〟があったのではないかといわれている。わかりやすくいえば、フランスは日産がほしい。だから、ルノーと日産の経営統合を条件に、ゴーン氏の続投を認めたのではないか……。

ご存じの通り、ルノーは1999年、経営破綻の危機にあった日産を傘下に入れ、日産はルノーから送り込まれたゴーン氏のもとで再建を果たしました。

しかしその後、日産は成長し、いまや、業績は逆転。実質的に日産がルノーを支えています。しかし、日産はルノー株を15%しかもっておらず、議決権をもたない。ルノーを支えていながら口出しはできない関係です。

ゴーン氏は、ルノー・日産アライアンスという画期的なマネジメント体制を構築し、かねてから、ルノーと日産は「ウィン・ウィン」でなければならないといっていた。ところがここにきて、ゴーン氏は、フランス政府に肩入れを始めた。日産としては、このままではルノーに統合されかねないという危機感をもった。

内部告発、司法取引の結果のゴーン氏逮捕ですから、ここまでくれば、日産にゴーン氏が戻ってくることは考えにくい。しかし、一方のルノーは、ゴーン氏の会長兼CEO解任を見送りました。つまり、日産の会長、代表取締役を解任されても、ゴーン氏はルノーのCEO、あるいは3社連合のCEOを継続する可能性は、完全には、まだなくなっていない。


※カルロス・ゴーン氏

そうなると、今後の展開次第では、日産はゴーン氏を斬った返り血を浴びる事態に、ならないとも限りません。

ルノーの大株主の立場からいえば、マクロン大統領は経済政策を大きく掲げていますから、何としても日産をつなぎとめたい。簡単には引き下がらないでしょう。

改めていうまでもなく、いまや世界の自動車業界は「100年に一度の大変革」の時代といわれ、「CASE(コネクティッド・自動運転、シェアリング、電動化)」をはじめ、技術・サービスの開発競争は熾烈を極めています。

一日でも開発が滞れば、競争に遅れをとるといわれるなかで、経営陣がゴタゴタするのは、日産、ルノー、三菱自動車のいずれにとってもよくないことです。ケンカしている場合ではないというのが実情ですよ。

ルノー、日産、三菱自動車は、これまで、アライアンスによって規模を確保し、開発費や調達費を抑えながら、世界の競合と張り合っていく戦略をとり、そこに生き残りをかけてきました。そのアライアンスは、実質的に、ゴーン氏のカリスマ性、リーダーシップに依存して成り立っていましたから、ゴーン氏逮捕によって、アライアンス自体、崩壊の危機です。

事態はずいぶん混迷していますが、もっとも避けなければならないのは、日産や三菱自動車、ルノーの株価が下がり、またブランドが棄損して自動車が売れなくなり、3社が凋落してしまうことです。おそらく、落ち始めれば、あっという間でしょう。そんな事態は、従業員も、株主も、顧客も、国も、誰も喜びません。

自動車産業は、日本にとってもフランスにとっても、大切な戦略産業です。両国政府は、なるべく被害が大きくならないように連携し、事態を速やかに収拾するための手段を考えるしかありません。

ゴーン氏の逮捕は、国家間の外交問題に発展しています。まだしばらく、決着しそうにありません。今日にも、世耕経済産業相はフランス経済財務相と会談するといいますが、両国とも知恵を絞り合い、両国に痛みの少ない形で決着をつけるしかありません。

両政府間で、解決に向けての仕組みづくりが行われるのではないでしょうか。

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