「恒久減税を認めていただいたことに感謝したい」――。日本自動車工業会会長の豊田章男氏は20日の定例会見の席上、自動車税の減税が盛り込まれた与党税制改正大綱について、そのように述べました。
※自工会会長の豊田章男氏
「日本のユーザーは、世界一高いレベルの税金を負担している」と、豊田章男氏が述べたのは、9月20日の定例会見の席上でした。
実際、欧米などの主要国に比べて、自動車の購入や保有でかかる税負担は高く、日本自動車工業会は、約3万円から11万円の自動車税を、軽自動車並みに近づけることを目標に、強く是正を求めてきました。
そして、政府・与党は今月14日、クルマを持つ人に毎年かかる自動車税について、最大で年4500円減税する方針を固めました。減税規模は総額約1300億円規模になります。
保有にかかる税金は、時期を明確に区切らない恒久減税となります。1950年の創設以来、70年近くが経過した自動車税に初めて風穴があけられたことになるんですね。
あわせて、政府・与党は、20年度以降に自動車に関するいまの税体系を抜本的に見直し、走行距離や重量などに応じた課税の仕組みを検討しています。
これに対して、豊田氏は、「クルマを使って働いている人から税をとることは断固、反対」と述べました。
シェアリングの拡大などにより、走行距離など、クルマの「利用」に着目した税制は、一見、望ましいように見えますが、しかし、クルマが移動の中心である地方在住者ほど負担が大きくなりかねないという問題が出てくる。また、運送業者など、クルマを仕事に使う人にとっては、増税になる恐れがあるんですね。
豊田氏は、自動車産業を〝納税産業〟と見るか、〝戦略産業〟と見るか、対立軸があると指摘しました。
「走行税については、道路を使う人が補修にもお金を出すという考え方ですが、これは、自動車産業を〝納税産業〟と考えている人の論理です」
そして、引き続き検討される走行税について、「もし必要というのであれば、4兆円という一般財源について納得のいく説明が求められる」と述べました。
CASE(つながるクルマ、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる大変革期と同時に、少子高齢化や働き方の多様化など、社会構造も大きな変化に直面しています。
自動車産業の競争力を高めつつ、消費者の利用実態に合った課税をし、税収を維持することはできるのか。
「市場がどういう顔になるかは、税制が決めるのだと思います」と、豊田氏は述べましたが、自動車をめぐる経営環境の変化を抜きにして、課税の仕組みの抜本改革を論じることはできないのではないでしょうか。
自動車産業は、「100年に一度の大変革」を前にしています。いまやクルマは新しいモビリティ社会の支え手であり、まさしく〝戦略産業〟そのものです。〝納税産業〟と一線を画すのは明らかだといっていいでしょうね。