豊田章男さんと孫正義さんが握手した、画期的な会見から約半年。トヨタとソフトバンクの合弁会社「MONETテクノロジーズ」(以下、MONET)の用意したプラットフォームに、ホンダと日野自動車が参画を決めました。
3月28日、MONETは、全国の地方自治体や企業向けに、今後の事業展開や新たな取り組みなどを紹介するためのイベントを開催しました。
会場には、登壇予定のなかったトヨタ社長の豊田章男さんが〝乱入〟。トヨタの社長肝煎りのプロジェクトであることを、強く印象付けました。
※宮川潤一さん(左)と豊田章男さん(右)
豊田さんは、「自動車のほうも、今回ホンダさんと日野さんが入られるということで、自動車業界は、非常にオープンな形で第一歩が踏み込めた」とコメントしました。
ホンダはもともとソフトバンクとAI開発で提携していて、繋がりがあった。ソフトバンクが仲介したとはいえ、トヨタとホンダが事業で手を組むのは極めて珍しいことです。国内自動車メーカー1位2位が、一つのプラットフォーム上につながった。
MONET社長兼CEOの宮川潤一さんは、「本当は、日本を走っているクルマ全部のログが一つのプラットフォームに集まってきて、それを共有し合う、これが最終目標です」と語りましたが、それも夢物語ではない。MONETは、オールジャパンの画期的なMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)のプラットフォームになる可能性が見えてきました。
MONETサミットの会場には、自治体関係者約280人、企業関係者約320人と報道関係者が集まり、MONET役員のほか、三菱地所、フィリップス、Yahoo!ジャパンの社長や役員らが登壇して、MONETプラットフォームの上で展開するサービスなど未来図についてプレゼンテーションを行いました。
※会場には、e-Paletteのモデルなどが展示された
日本はいま、少子高齢化、過疎化、人手不足など、多くの社会課題を抱えています。過疎地域の高齢者の移動手段や、都市部の渋滞、ドライバー不足などの課題解決に、MaaSは大きな役割を果たす可能性がある。
ただし、実用的なMaaSの実現には、一つのプラットフォームに、自動車、電車、タクシー、バスなどあらゆる交通手段を接続する必要があります。個別最適では、社会課題は解決できない。そのことは、どう考えても間違いありません。そして、時価総額1位のトヨタ、2位のソフトバンクが、MONETというプラットフォームを用意した。つまり、MONETには、社会課題をMaasで解決するという「大義」があります。これに、乗らない手はないでしょう。
MONETにおいて、もっとも注目すべきは、自動車業界だけでなく、小売、流通、飲食、金融、医療など、あらゆる業界、さらに自治体までを巻き込んだ、とても大きな絵を描いているということです。社会全体のパラダイムチェンジを目指しています。
自治体でいえば、すでに、横浜市、鎌倉市、名古屋市、豊田市などのほか、北海道安平町、秋田県仙北市、長野県伊那市、福岡県嘉麻市、熊本県菊池市など17自治体と連携しており、約150の自治体と話を進めているといいます。数年間は赤字覚悟で、上限を設けず、できるだけたくさんの自治体と一緒にあらゆるチャレンジを進めたいといいます。
また、MONETのコンソーシアムには、ANA、ファーストリテイリング、コカ・コーラボトラーズジャパン、フィリップス、ヤマトホールディングスなど、すでに88社が名乗りをあげている。具体的なサービスの開始はこれからですが、例えばサントリーは、職場から自宅まで、自動運転車のなかを「バー」として活用し、ビールを飲んでくつろぎ ながら帰宅するサービスなどを提案しています。
宮川さんは、「JR東日本さんとの連携には非常に期待しています」とコメントしました。鉄道のような一次交通と、自動車のような二次交通の間を、シームレスにつなぐ。例えば、JR東日本のもつデータ、Yahoo!の乗換案内のデータなどをMONETのプラットフォーム上で共有すれば、電車を降りたところに、予約した自動運転車がオンタイムでやってくるサービスを実現できるかもしれません。そうなると、「MaaS」の可能性が大きく広がります。
MONETは、サービサーと、ニーズのある自治体をつなぐ役割も果たします。
MONETのサービスは、さまざまな利用シーンが考えられますが、問題はマネタイズです。運用費は、サービサー、ユーザー、自治体などが負担することになると考えられますが、どのサービスに、どれくらいのニーズがあり、どのくらいが適正価格なのか。新たなサービスの創出は、すべてが手探りです。
日本の「MaaS」は、欧米などに遅れをとっているといわれます。「MONET」は、挽回のキッカケとなるでしょうか。