4月25日、日野自動車は2019年3月期決算発表会を行いました。売上高は7.8%増の1兆9813億円と過去最高です。営業利益は7.9%増の867億円、純利益は6.9%増の549億円。世界販売台数はアジアなど海外が伸び、20万3154台と初めて20万台をこえ、これも過去最高です。
冒頭、日野自動車社長の下義生さんは、「自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えております」と、近年、よくいわれるフレーズを改めて繰り返しました。
※日野自動車社長の下義生さん
100年に一度の大変革期とは、つまり、商用車における「CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の普及です。商用車分野は、むしろこうした技術の導入が、乗用車よりも早く進むといわれます。
日野自動車は昨年10月に、2025年に向けた中長期ビジョンを発表しました。安全では、運転支援技術や自動運転技術、ドライバーモニターなどの技術によって、2020年代に高速道路、30年代に一般道での死亡事故ゼロを目指す。
また、環境では、50年までにディーゼルエンジンのみの車両は廃止し、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車などの電動車を拡大する方針です。
さらに、昨年4月以降、フォルクスワーゲン傘下のトレイトングループと電動車の開発や調達で戦略的協力関係の構築を進めている。トヨタとマツダが中心となって進めるEV.C.A.スピリットにも参画しているほか、トヨタとソフトバンクなどの合弁会社であるモビリティサービスなどを手掛ける、MONETテクノロジーズにも参画しています。「CASE」の各方面にしっかりと対応し、100年に一度の大変革期を生き抜くための準備を、着々と進めているんですね。
ただ、昨日の会見では、下さんは意外にも「原価低減」を強調しました。今後の取り組みのポイントだといいます。
「車両の台当たり原価の低減、そして業務の抜本的な見直しによる固定費の抑制といった、徹底した原価低減活動で、稼ぐ力の向上に取り組んでおります」(下さん)
台当たり原価については、車両開発におけるアライアンスを活用した調達や技術開発協力による原価低減。ものづくりにおいては、自働化による稼働率の向上。工場から顧客に届けるまでの整備生産性の向上や部品物流費の削減を進めるなど、原価低減を徹底して行うといいます。
「CASE」「CASE」と騒いでも、製造業である限り、モノづくりの基本は変わりません。むしろ、大変革期を乗り切るには、モノづくりの部分でしっかりと稼ぎ、リソースつくって先行投資に回すことです。地に足をつけて取り組んでこそ、100年に一度の大変革を乗り切れる。
今後は、ビジョンの実現に向けて、実行力が問われます。