東芝は、米原子力発電事業の巨額損失問題などによる経営危機を脱したかに見えます。果たして、このまま〝成長モード〟に移ることができるのか。〝車谷体制〟の今後の課題はどこにあるのでしょうか。
※東芝の車谷暢昭会長・最高経営責任者(CEO)
東芝が13日に発表した2019年3月期の連結決算は、売上高が前年比6%減の3兆6935億円、営業利益は同58%減の354億円でした。
東芝は昨年11月、グループの5か年の会社変革計画として、「東芝Nextプラン」を策定し、サイバー・フィジカル・システムテクノロジー企業を目指しています。
13日に開かれた取締役会では、「東芝Nextプラン」の実行に向けた新たな人事案が決定されました。6月26日開催の定時株主総会で承認を得る予定です。
なかでも、大きく変わるのが、社外取締役の構成です。外国籍取締役を含む5人の取締役を含め、独立社外取締役は7人から10人へと増員になるんですね。
「当社の株主は、7割が海外株主です。新しい取締役候補者は、国際的な事業経験者であること、そして、『東芝Nextプラン』の執行を推進していくためのスペックに合う人を探しました」と、会長・最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏は会見で述べました。
社外取締役には、投資会社出身者などの外国人のほか、LIXILグループ元社長の藤森義明氏も加わります。また、三菱ケミカルホールディングス会長の小林善光氏は留任します。
取締役に外国人を起用するのは、東芝の歴史上80年ぶりです。再建に向け、新たな布陣が築かれたことになるわけですが、今後とも東芝の事業環境が厳しいことには変わりありません。
ご存じの通り、米LNG事業の売却先が決まっていないほか、電子デバイス部門のシステムLSIは中国の景気減速で営業赤字が続いています。半導体メモリー事業に代わる収益源はいまだ育っていません。
車谷氏の経営の舵取りは、いっそう難しさを増しているといえますね。
加えて、東芝が再び〝成長モード〟に転換するには、従業員のモチベーションも上げていく必要があります。
「東芝はロジカルに動く会社です。ですから、従業員が納得して動くことが大事だと考えています。それを手間暇かけてやっているところです」として、車谷氏は次のように説明しました。
「例えば、調達についてですが、どの製品のどのアイテムで改善できるかを注意深く取り組んでいます。それから大切なのは、どこに問題があるかを責めるのではなくて、全員で問題解決に臨むことです。20年3月期の営業利益1400億円に向けて、日に日に一ミリずつ物事を詰めるアプローチでやっています」
さらに、車谷氏はこう語りました。「大切なのは、意識改革を文化にしていくことです。この六か月でそれはかなり進んだと思います」
ただし、新しい企業文化を根付かせるのは簡単ではありません。ひとたび危機感が薄れるようなことがあれば、〝成長モード〟から、再び〝危機モード〟へと一気に転落することもないとはいえない。再建への道のりはまだまだ厳しいといわざるを得ませんね。