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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産復活への前途多難

ゴーン氏による〝拡大路線〟のツケは、想像以上に大きいといわざるを得ません。「過去、相当ムリな拡大をした」と、日産社長の西川廣人氏は述べましたが、いったん拡大した路線を縮小するのは簡単ではありません。〝拡大〟より〝縮小〟の方が大量のエネルギーを注がなければならないからです。


※日産社長の西川廣人氏

日産自動車が14日に発表した2019年3月期の連結決算は、売上高が前期比3.2%減の11兆5742億円、営業利益は45%減の3182億円でした。主力の米国市場での販売が振るわず、環境規制への対応費用なども増加したためです。

米国市場では、インセンティブの問題があります。販売奨励金をつぎこまないと日産車が売れない事態が生じました。

2020年3月期の連結業績予想は、アメリカや欧州で販売の落ち込みが続くとして、売上高が前期比2%減の11兆3000億円、営業利益は27%減の2300億円を見込んでいます。

「不採算事業の整理や生産体制の見直しなど、〝外科的手術〟は足早に行い、重要市場のアメリカではブランド力を上げながら着実に成長を目指していきます。いま、この時期に思い切ったアクションをとり、将来に備えるのが重要だと考えています」と、西川氏は会見の席上、述べました。

問題は、一度、拡大した路線を見直すのは簡単ではないことです。ホンダを例に挙げれば、12年に「16年度に四輪販売600万台」という数値目標を掲げ、拡大路線に手を染めましたが、4年たったいまなお、拡大路線を完全には修正できていません。そのツケがホンダを痛めつけているんですね。

「規模拡大路線からよりサステイナブルな拡大路線へ変えていきたい」として、西川氏は次のように説明しました。「販売コストの改善や余剰生産能力の縮小に取り組み、今期までの2年を底にして業績を反転させたいと考えています」

ゴーン氏が掲げた、ルノー・日産・三菱自動車の3社連合による世界販売台数1400万台の拡大路線は、日産を苦しめています。

日産は、過去の投資に対する具体的なリストラ策として、余剰生産能力を10%縮小する計画を明らかにしました。また、グローバルで4800人を削減し、年300億円のコスト低減をめざす方針ですが、それだけでは到底、過去の〝負の遺産〟を整理することはできないでしょう。

拡大路線の最大のツケは、新車の開発に投資できなかったことです。

今後の新車の投入計画について、「22年度までにコアモデルのすべてをリニューアルする」と、西川氏は語りました。グローバルでは、20以上の新型車を投入することになります。

また、成長が見込めるEVとeパワーの販売拡大を進めるのは、これまでと変わりありません。22年度に、日本と欧州での比率を半分以上にするとともに、グローバルでは30%にする計画です。

西川氏は、「業績低迷からの脱却が最優先課題」と述べましたが、それにはまず、米国の収益改善と同時に、足元の国内市場を掘り起こすことが重要ではないでしょうか。

国内市場では、「ノートeパワー」が2018年度登録車販売台数ナンバーワンとなったほか、「セレナeパワー」が同年度ミニバンセグメント販売台数ナンバーワンになりました。

「技術の日産としてのDNAは変わりません」と、西川氏は強調していましたが、それを強みに、業績回復に集中すべきなのはいうまでもありません。

果たして、西川氏は日産の業績回復をなしとげられるかどうか。それは、西川氏が社内の一体感をつくれるかどうかにかかっていると思います。

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