三菱自動車は5月17日、会長兼CEO(最高経営責任者)の益子修氏がCEOを退任し、後任のCEOに生え抜きの加藤隆雄氏を充てる人事を発表しましたが、20日、都内であらためて記者会見を開き、CEO交代について説明しました。
※益子修旧CEO(写真左)と新CEOの加藤隆雄氏
ご存じのように、益子さんは三菱商事で自動車畑を歩み、2005年に三菱自動車社長に就任、14年の長きにわたって、経営トップを務めてきました。
燃費不正問題で日産の出資を受け入れた16年、益子氏は社長兼CEOに就き、18年11月のゴーン氏の逮捕後は会長兼CEOを務めていました。
益子さんは、CEOを退いたとはいえ、ルノー日産とのアライアンスに関しては、引き続き、責任をもって担当すると語りました。
「16年にアライアンスのメンバーになった当時、自動車業界は明るい末来のもとにありましたが、いまは違います。複雑化し、未来の読めない時代に、ルノー、日産、三菱自動車が新しいメンバーでどのようにチャレンジしていくかということだと思います」
その一方で、加藤氏を新しいCEOに指名したことについて、益子さんは、「どこの出身かではなく、適任者は誰かということを考えてきました」と語りました。
6月の株主総会を経て、新しいCEOに就任する予定の加藤さんは、三菱自動車入社後、ロシやインドネシアの合弁会社設立に関わりました。現在は三菱自動車のインドネシア合弁子会社の社長を務めています。
益子さんは、加藤さんを次期CEO候補に選んだ理由について、「モノづくりの知見と誠実な人柄」と語りました。
三菱自動車が5月9日に発表した19年3月期の連結決算によると、全地域での好調な販売を背景に、売上高は前年比14.7%増の2兆5146億円、営業利益は同13.9%の1118億円と、2期連続の増収増益です。
振り返ってみれば、益子さんは、三菱自動車の再建という任務をおびて、三菱商事から送り込まれました。したがって、業績が回復基調に乗ったことで、益子さんはCEOの座を生え抜きの加藤さんに譲り渡したといえます。
また、益子さんにしてみれば、この秋以降に発表する「新中計」の実行を新しいリーダーに任せたいという背景もありますね。
CEOのバトンを渡された加藤さんの責務は、業績の回復を果たした三菱自動車を成長軌道に乗せることです。
自動車業界にはいま、CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる技術革新の波が押し寄せています。従来の自動車業界の常識を覆す大転換です。
三菱自動車はCASE時代をどう戦っていくのか。加藤さんは、どのような方向性を示すのか。
加藤さんは、「謙虚にその道の専門家と相談していきます」と述べるにとどまりましたが、CASEの戦い方が、今後の三菱自動車の成長を左右するのは間違いありません。
加えて、三菱自動車が得意のアジア市場でいかなる成長戦略を描くのか。新CEOとなる加藤さんの豊富な海外経験、とりわけアジアでの経験が生きてくるのではないでしょうか。