5月21日、ソニーは、2019年度経営方針説明会を開催しました。
※ソニー社長兼CEOの吉田憲一郎さん
ソニーは、昨年、前任の平井一夫さんから、吉田憲一郎さんに社長が交代しました。今年は、昨年発表した18年度から20年度までの中期経営計画の2年目にあたります。
「私たちにとって一番重要なことは、ソニーの〝存在意義(Purpose)〟の定義です。半年以上時間をかけて、社員からも広く意見を募ってつくりました。この会社が〝長期的に持続可能〟になっていくためには、我々の存在意義は何か?ということを明確に定義して、社員としっかり共有することが重要だと思っています」
と、吉田さんは語りました。
たどり着いた存在意義は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」です。経営方針として、「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」を掲げました。
もはやソニーは、テレビやスマートフォンといった「エレキ」の会社から、ゲーム、音楽、映画といった「エンタテインメント」を前面に押し出す会社に脱皮しつつあります。テレビ全盛時代を考えると、隔世の感がありますね。
エンタテインメント事業のなかでも、注目はゲーム事業です。ゲーム業界はいま、従来の据え置き型に加えて、クラウドを使ったストリーミングゲームが普及しつつあります。ソニーは、据え置き型においては「プレイステーション」の次世代機、ストリーミングゲームにおいては、16日に発表した、米マイクロソフトとの提携がカギを握ります。
据え置き型で激しく争ってきた2社の提携は、驚きでした。この提携は、既存の競争のルールや枠組みが、これからの未来にはまったく通用しないことを象徴しています。
今回の経営方針説明会では、吉田さんは、利益水準の目標に言及しませんでした。その理由について、記者の質問に答えて、次のようにコメントしました。
「ともすれば、経営を短期視点にしてしまうリスクを伴います。3年後の利益も非常に大事ですが、3年間の時間軸でしか、あるいは単年度の利益しか考えなくなるリスクが出ると思います」
これまでのルールが通用しない時代に、〝長期的に持続可能〟であるためには、テクノロジーへの継続した投資が欠かせません。一方、ゲーム、音楽、映画といったエンタテインメントの事業領域は、どうしても業績に波が生じる。そのなかで、確実に未来への投資を続けるために、吉田さんは、利益目標への言及を避けたのでしょう。
ソニーは19年3月期、2年連続の過去最高益でしたが、今期は減益予想です。環境の激変のなかで、先の読めない闘いが続きます。吉田さんの覚悟が問われます。