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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニックのAI活用戦略とは

パナソニックは、28日、AI(人工知能)活用戦略と先端人材育成についての説明会を行いました。

近年、コンピュータやネットワークの中の領域である「サイバーの世界」と、実在する現場や商品の世界である「フィジカルの世界」を結びつけた、「サイバーフィジカル」という言葉を、よく耳にするようになりました。


※九津見洋さん

冒頭、パナソニックイノベーション本部AIソリューションセンター所長の九津見洋さんは、次のように説明しました。
「サイバーの世界は、AIというパワフルな技術が席巻しています。『サイバーフィジカルの時代』において、モノづくり中心で成長してきた会社にとっても、AIをうまく活用することが飛躍につながると考えています。フィジカルに密着したAIの活用を考えたい」

パナソニックがもつフィジカルの世界の強みを、サイバーフィジカル時代の強みにつなげていく。具体的には、フィジカルの世界、すなわち家電や住宅などから得られるデータをサイバー空間で分析し、社会課題の解決につなげるということです。

もっとも、AIそのものの技術についていえば、米GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)やマイクロソフト、中国のBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)などに比べて、日本企業はほとんど存在感がありません。

そんな中で、パナソニックは、17年に米データ解析会社のアリモを買収、18年9月にはAIを使ったスマートホーム事業で米BrainofT社と連携するなど、AI分野の強化に取り組んできました。

今後、介護など家の中の体験、自動運転ライドシェアなど移動体験に加え、AIの社内への普及や実装に取り組んでいく方針といいます。外部の高いAI技術を使いつつ、パナソニックが持つ固有のデータや専門知識を生かして、AIを活用したビジネスの競争力とする考えです。

一例としてあげられたのが、歩行支援ロボットです。歩行能力、脚力の回復度合いに従って、反力の与え方をAIで調整し、歩行機能回復に役立てる。また、コグニティブセンシングと呼ばれる技術で、人の行動をセンシングする際、人間にはわからないけれどAIだけが理解できる画像にして、プライバシーに配慮したセンシングを行うことができます。

ほかにも、門真のパナソニックのキャンパス内で、社員向けにサービスとして提供している自動運転車両が紹介されました。自動運転、リモート遠隔制御や車載セキュリティ、運行管理にかかわるデータ分析・予測、電池のマネジメントなどにAIを実装し、MaaSサービスのパッケージとして運用しているといいます。

それぞれの領域に、いかにAIを実装するかとなったとき、専門領域の知識をもった人材に、AIを使いこなしてもらう必要があるわけですね。

以下は、九津見さんの発言です。
「『AIはあくまで道具である。私たちはAIを使いこなす大工のような存在である』。これが私たちの基本の考え方です。切る道具には、ノコギリにしても色んなものがある。これから解きたい案件、どういったものをつくるのかによって、最適な道具を選ぶ。それは大工の経験値や能力、知識であると考えます」

現に、「大工」ことAIを使いこなせる人材の獲得に加え、社内での育成に力を入れています。

16年以降、社内でAI人材育成プログラムを行っています。18年には、2020年までに、AIを使いこなす人材を1000人にする目標を掲げましたが、「数の上では着実に進捗している」と、九津見さんはいいます。

AIのビジネスへの活用は、倫理、AI品質の保証など、課題も多い。十分な収益をあげられるようになるのは、まだ先でしょう。しかし、準備は、着実に進めていかなければいけません。

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