新型コロナウイルスの感染拡大で新車需要が風前の灯であることから、自動車メーカー各社は国内工場の稼働停止期間の延長を次々と発表しています。減産が長期化すれば、部品メーカーの経営への影響は避けられません。とりわけ、経営基盤がぜい弱な中小、零細サプライヤーへの影響の深刻化が懸念されます。
トヨタは4月、国内5工場の7つのラインを一時休止し、ホンダなど自動車メーカー8社も国内生産を一時停止しました。自動車メーカー各社は5月以降も、生産稼働の調整を実施する計画です。
国内の生産活動の停滞で懸念されるのが、自動車部品の供給構造を下支えするサプライヤーへの影響ですね。生産調整が長引けば、サプライヤーの中には事業継続がむずかしくなるところが出てきます。1社でも欠ければ、自動車の生産に多大な影響が出てくることが予想されます。
思い出されるのは、2007年の新潟県中越沖地震での出来事です。自動車製造に欠かせないピストンリングを生産するリケンの工場が被災し、生産停止に追いやられたことから、国内の自動車メーカーのすべてのラインが生産停止に追い込まれました。自動車メーカーはこのとき、サプライヤーからの部品供給ストップの影響を嫌というほど思い知ることになったんですね。
ご存じのように、日本の自動車メーカーは、技術力を底力とした系列部品メーカーによる巨大なサプライチェーンを土台に競争力を築き上げてきました。かりにも、コロナ禍を引き金に部品メーカーが連鎖的に廃業するようなことにでもなれば、お手上げです。それこそ、自動車メーカーは、コロナが収束した際、スタートダッシュをかけられなくなります。
トヨタ社長で、日本自動車工業会会長を務める豊田章男氏は、4月10日の自動車工業4団体の合同会見で、資金繰りがむずかしくなった会社を支援する「互助会ファンド」の構想を明らかにしました。豊田氏が「互助会ファンド」の組成にまで言及したのは、サプライヤーを守れなければ、自動車産業は致命的な傷を負うという危機感にほかなりません。
「コロナが収束したときに備えて、スタートダッシュの準備をしていきたいが、その間にわれわれの仲間が死んでしまってはどうしようもない」と、豊田氏は記者会見で述べています。
サプライヤーの中には、規模は小さいながらも、高い技術力を持つところが少なくありません。その会社でなければつくれない部品も数多く存在します。
「少なくとも一次サプライヤーには、すぐさま派遣切りするようなことがないようにお願いしている。ただし、それぞれの会社の都合はあると思う。中小、零細企業を含めて、何とか雇用を守っていきたい」と、豊田氏は述べました。
コロナ危機が長期化し、先行きが見えない中、サプライチェーンへの影響が懸念されます。