巨額の赤字、コロナ禍による販売減、アライアンスの再構築。日産は3つの難題を抱えています。内田体制は3重苦を乗りこえられるのか。まさに真価が問われています。
日産自動車が28日に発表した2020年3月期連結決算は、最終損益が6712億円の赤字となりました。6712億円の赤字は、カルロス・ゴーン前会長が大ナタを振るった2000年3月期の6843億円の赤字に匹敵する規模です。
また、2023年度までの構造改革では、生産能力を20%削減し、年間生産体制を540万台にするほか、余剰設備と生産性の低い領域を減らして、約3000億円の固定費を削減することが発表されました。
「700万台規模のまま、利益を出すのは困難。失敗を認め、余剰資産の管理を徹底していきます。過度の販売台数を追わず、収益を確保した着実な成長を目指していきます」と、オンラインでの会見にのぞんだ社長兼CEOの内田誠氏は述べました。
そもそも日産の体質からいって、改革には相当の腕力が必要とされますが、今回の大赤字からの回復には、ゴーン氏に匹敵する強いリーダーシップが必要になるでしょうね。
まず、〝3重苦〟の1つめとなる大赤字の解消策として、日産は、生産能力の20%削減を打ち出しましたが、一度大きくした生産能力を小さくするのは簡単ではありません。また、さらなる人員削減は、社員の痛みをともないます。社員は、どこまで改革についていけるのか。
〝3重苦〟の2つめとなるコロナ禍による販売減については、今後18か月の間に少なくとも12の新型車を投入する計画を発表しました。思い切った計画です。
また、〝3重苦〟の3つめとなるアライアンスの再構築については、昨日、3社による会見があり、アライアンスの連携強化とコスト削減策が発表されましたが、果たして思惑通りにいくかどうかといったところですね。
内田氏には、このように巨額の赤字に加えて、コロナ危機、アライアンスの再構築という〝3重苦〟のもとでの構造改革が課せられています。
ただし、希望があるとすれば、日産には過去、経営破綻寸前から奇跡的に回復した〝実績〟がある。社員には、再び破綻の危機には立ちたくないという痛烈な思いがあるはずです。
今回もまた、あの復元力をもって、業績を回復させることができるのか。
「覚悟をもってやっていく」と、内田氏は会見の最後に述べましたが、並大抵の覚悟では、困難を乗り切ることはできないといえるでしょう。