日本自動車工業会会長の豊田章男氏が、4月10日の自動車工業4団体の合同会見で明らかにしたサプライヤー支援がいよいよ始動します。自動車業界初の取り組み「助け合いプログラム」の設立の背景には、「私たち自身が踏ん張って経済を回し続ける」という豊田章男氏の強い決意があります。
※3月19日の自工会会見での豊田章男氏
「自動車産業の技術を継承し、自動車産業を支え、日本の経済を復興していくには、サプライチェーンを維持する必要がある」と、4月10日の会見で、豊田氏は述べました。
コロナ収束後、サプライチェーンの1社でも欠ければ、自動車産業は日本経済の復興役になれません。裾野の広い自動車産業の技術とそれを支える技能を持った人材を守り抜かなければならないと、豊田氏は強い危機感を持っています。
日本自動車工業会は23日、自工会より三井住友銀行に預け入れる預金を担保にして信用保証を行うことで、資金調達を必要とする自動車関連企業が、取引銀行から迅速に融資を受けることを可能にする「助け合いプログラム」を発足すると発表しました。
「スピード感をもって、まずは早期に資金を届けたい」と、自工会理事の矢野義博氏は23日に行われたオンライン会見で述べました。
当初、豊田章男氏による構想発表時には、「互助会ファンド」とされていましたが、信用保証の枠組みにしたのは、「ファンドの枠組みをつくるのは時間がかかるため」と、矢野氏は説明しました。
保証限度額は、原則1億円で、総額20億円が想定されています。
プログラムの対象は、新型コロナウイルスの影響により資金繰りに影響がある企業で、自動車産業や日本のモノづくりにとって不可欠と考えられる開発、生産、製造の技術や商品の保有状況などを考慮の上、決定されます。
豊田氏は4月10日の会見で「本当に残すべきものは何かを見極める〝目利きの力〟が必要になる」と述べました。つまり、「助け合いプログラム」のカギを握るのは、〝目利きの力〟です。〝目利きの力〟がどのように発揮されるのかは、今後の「助け合いプログラム」の取り組みを見ていく必要があるでしょう。
トヨタ自動車は欧州や北米などで稼働を再開しましたが、自動車メーカー全体の生産回復はまだまだ見通せません。コロナの影響による減産が長期化すれば、サプライヤーには死活問題になります。
「助け合いプログラム」には、業界が一致団結してコロナを乗り切ろうという、豊田氏の強い意思が込められています。