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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「シーテック」の挑戦、コロナ禍だからできること

ウィズコロナのキーワードは、〝非接触〟〝遠隔操作〟そして〝デジタル〟です。当然、イベントや展示会のあり方も変わるでしょう。毎年10月に開催されるアジア最大の家電・IT見本市「シーテック」は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、幕張メッセでの開催からオンライン開催に移行し、ウィズコロナの新しいイベントのあり方を提案します。「前年を上回る来場者数をめざしたい」と、シーテック実施協議会エブゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は、オンライン会見で述べました。


※シーテック2018の準備風景

新型コロナウイルスの感染拡大で、イベント開催は世界的に困難な状況が続いています。

私もいったことがありますが、世界最大級の時計見本市「バーゼルワールド」は、新型コロナウイルスの影響で来年1月に延期されたことを機に、ロレックスなど主要ブランドが撤退し、100年の歴史に事実上、幕を下ろしました。ファッション界も人が集まるかたちでの展示会は避けなければならず、ブランドによってはオンラインでの展示会を開催したり、時期を延期したりしています。

日本の大イベントの一つ、家電・IT見本市「シーテック」もまた、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、リアル会場での開催を断念しました。

「かなり悩みました。ストレスもありました」と、鹿野氏は苦渋の決断だったことを明らかにしました。

最大の課題は、出展者と来場者のコミュニケーションですよね。オンライン開催では、会場で最新技術を体験したり、説明員から直に説明を受けたりできない。昨年は、787法人が出展し、約14万人が来場しましたが、この制約を乗り越えて、出展者、来場者を集められるのか。

「メッセでは、できないことをやります」と、鹿野氏は意気込みを語りました。

例えば、リアルタイムのチャット機能です。チャット機能を使って、出展者と来場者がリアルに代わるコミュニケーションを図ろうというんですね。また、出展者には、自社のブースを訪問した来場者のログデータをリアルタイムで閲覧できるようにするほか、チャットから商談の場につなげるツールなども用意する計画です。

じつは、「シーテック」が新しい開催のかたちを模索している背景には、「シーテック」そのものが岐路に立たされていることもあると見ていいでしょう。

2000年代のはじめこそ、シャープの液晶テレビやスマートフォンなどの展示が活況でしたが、エレクトロニクス産業の衰退とともに、「シーテック」は勢いをなくし、2014年にはソニーが参加を見送りました。2016年頃からは、IoTやAI、また、エレクトロニクス化が進む自動車業界を取り込んだ展示が目立つようになりました。

さらに、出展者は日本の「シーテック」よりも、1月にラスベガスで開催される「CES」、ベルリンや上海で開かれる家電見本市に重点を移すようになっていました。

その意味で、コロナ禍でのオンライン開催、そして新しい開催のかたちの模索は、「シーテック」にとって、起死回生のチャンスといえます。

コンテンツのつくり方、システムの構築、情報発信の仕方、商談のあり方など、課題は山とありますが、それでも、新しい開催のかたちを模索していかなければなりません。

「その先には、リアルとオンラインのハイブリッド開催を見据えています」と、鹿野氏は述べました。

コロナ収束後、幕張メッセでの開催が可能になったとしても、従来型のブース開催のみに戻ることはなさそうです。

これを機に海外からの参加は回復するのか。再び勢いを取り戻せるのか。今回の開催で21回目を迎える「シーテック」は、これまで以上に重要な節目を迎えています。

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