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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

テスラはなぜ、時価総額でトヨタを抜いたのか

アメリカのEV(電気自動車)メーカー、テスラの時価総額が7月1日、トヨタ自動車をはじめて上回り、自動車メーカーで首位に立ちました。 トヨタの2019年の販売台数1074万台に対して、テスラは約36万台。およそ30分の1に過ぎません。利益を見ても、2兆円を稼ぐトヨタに対して、テスラは創業以来、赤字続きです。

そのテスラが時価総額でトヨタを上回った――。7月1日、テスラの時価総額は約2070億ドル(約22兆2400億円)にのぼり、トヨタの時価総額21兆7185億円を超えたんですね。

なぜ、テスラは時価総額でトヨタを超えたのか。一部には、現在の株価上昇はバブルだという声があります。主力の量産EV「モデル3」の勢いが株価を押し上げているのは確かですが、それだけではないと思います。

ご存じのように、テスラを率いるCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏は革命児であり、秩序の破壊者、異端児ですよね。オンライン決済サービス「ペイパル」の創始者であるとともに、宇宙関連事業「スペースX」社のCEOでもあり、ロケットの打ち上げのみならず、史上初の回収までを成し遂げ、とうとうNASAからの宇宙船の受注にもこぎつけました。

いってみれば、マスク氏の存在そのものが、テスラへの期待となり、テスラの価値を高めていると考えることができます。彼の経営力はあなどりがたいものがあります。

マスク氏のスピード感あふれる経営手腕は、日本の企業にとって大変刺激的です。

トヨタは2010年11月、当時、一ベンチャー企業に過ぎなかったテスラに出資し、「RAV‐4 EV」の共同プロジェクトを立ち上げました。

テスラとのEVの共同プロジェクトに携わった、現在、トヨタ執行役員の寺師茂樹氏は、テスラについて、「仕事の仕方からして、まったく違っていた。スピードがケタ違いだった」と述べています。ちなみにその後、共同プロジェクトは解消にいたりました。

「大きなビジョンをもてるのは天才だけ。私の知っている天才は、イーロン・マスクですわ」と、彼をよく知るパナソニック社長の津賀一宏さんは、7月7日に開催されたパナソニックの未来をつくる実験区「100BANCHI(バンチ)」が開催したイベント「ナナナナ祭」で発言しています。パナソニックは、テスラに車載用リチウムイオン電池を供給しています。

マスク氏が天才であることの理由について、津賀さんは次のように語ったんですね。

「非常識であること。過度な楽観主義であること。要は、都合の悪いことは消せるんです。これは、ふつうできない」

マスク氏のやることは、とにかく斬新です。それは、テスラ車の走りやデザインにもあらわれています。私は一度、「モデルS」に乗ったことがありますが、車内の静粛性は、ガソリン車とは異なる質感でしたし、運転席のすべてのスイッチ類はパネル式になっていて、完全自動運転を見据えた先見性を感じましたね。

いずれにしろ、マスク氏はこれからも、何をしでかすかわかりません。その意味では、不気味なところがあります。しかしながら、マスク氏に対する期待は大きく、無視できない存在なのは確かです。

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