国内の自動車メーカー5社(SUBARU、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ)と部品メーカー5社(アイシン、ジヤトコ、デンソー、パナソニック、三菱電機)は24日、MBD(モデルベース開発)を自動車産業に普及させるための組織「MBD推進センター」を発足させました。エンジニアリングチェーン全体で同じモデルを使って開発の効率化を図り、手戻りのない開発を実現するのが狙いなんですね。
※MBD推進センター ステアリングコミッティ委員長の人見光夫氏
MBDとは、実物の試作部品ではなく、コンピューター上で再現したモデルを使って、車両開発などを行うことをいいます。
メリットは、開発効率の向上と試作費用の低減です。
経済産業省は2015年、「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」を設置し、MBDによって開発を高度化する「SURIAWASE2.0」の取り組みを進めてきました。
それを、民間主体で継承したのが「MBD推進センター」で、その活動を最初から担ってきたマツダ・シニアイノベーションフェローの人見光夫氏が、ステアリングコミッティ委員長に就きました。
「カーボンニュートラルや〝CASE〟への対応で、どの会社もものすごく仕事量が増えています。全部やっていたら、いくら人がいても足りません。『すり合わせ』に時間を使っている暇はないんですよね」と、人見氏はオンライン会見の席上、述べました。
クルマの設計開発は、電動化や自動運転技術の搭載などによって、これまでとは比べものにならないほど、複雑化しています。また、「つながるクルマ」が当たり前になりつつある中で、ハードだけでなく、ソフトウエアを組み合わせた、より高度な開発体制が必要とされています。
人見さんのいうように、従来の「すり合わせ」で作業そのものが増えれば、いまや労力も時間も足りません。
求められるのは、デジタル時代の「すり合わせ」です。部品メーカーと自動車メーカーが同じモデルでつながり、開発の初期段階からデジタルで「すり合わせ」ができるようにすることです。
ただ、「すり合わせ」は、海外企業が模倣しにくく、日本のものづくりの強さを支えてきたといわれますが、反面、その強さゆえに、イノベーションを妨げる硬直性も指摘されてきました。
その意味で、日本の自動車産業にどこまでMBDを普及させられるか。とりわけ、中小部品メーカーの隅々にまでMBDを広げられるか。
そもそも人見さんは、マツダの次世代エンジン技術「スカイアクティブ」を率いた〝名物技術者〟です。その開発には、MBDの活用が不可欠でした。いや、MBDがなければ、スモールカンパニーのマツダが画期的なエンジンを開発するのは不可能だったでしょう。
参加メーカーは、「MBD推進センター」のもとで、MBDをいかに普及させていくのか。人見さんはそこで、どんな挑戦をして見せるのか。日本の自動車メーカーの競争力がかか