パナソニックが変わろうとしています。現在のカンパニー制を廃止し、2022年4月からは、持ち株会社「パナソニックホールディングス」の下に、8つの事業会社がぶらさがる形になります。狙いは、各事業会社の独立性を高め、経営判断のスピードを早めることです。オートモーティブ社にとって、それは何を意味するのか。メリットはどこにあるのか。
※東京モーターショー2019でのパナソニックの展示
8つの事業会社のうちの1つとなるオートモーティブ社は、自動車メーカーと直接取引をする「ティア1」サプライヤーです。売上高は約1兆3000億円、グループに占める売上げ比率は約20%です。
指摘するまでもなく、自動車産業はいま、「電動化」「自動化」「コネクティッド」「シェアリング」など、技術革新の真っただ中にあります。そこに商品をおさめるサプライヤーにも当然、変化への対応力が求められます。
その意味で、持ち株会社化によって、オートモーティブ社が自立して迅速な意思決定をする体制になったことは、理にかなっています。あえていえば、もっと早く決断できていればよかったでしょう。それはともかくとして、持ち株会社化はスピードの速い自動車産業を相手にするにあたっての追い風です。
問題は、オートモーティブ社がその追い風を活かせるかどうか。
「経営のスピードをもっと上げていきたい。それには、組織風土を変えなければいけないでしょう」と、合同取材の席上、パナソニック常務執行役員で、オートモーティブ社社長の永易正吏氏は述べました。
これは、簡単なことではないでしょう。というのは、これまでパナソニックは幾度となく組織風土改革を行ってきたにもかかわらず、十分な成果を上げているとはいえないからです。
では、オートモーティブ社は、どうやって組織風土を変えるのか。
「まずは、透明性の確保ですね。それから、失敗を共有化していくことも大切ですし、一人一人の仕事のムダをなくすことにも取り組んでいきます。それらを実行できてこそ、経営のスピードを上げることができるのだと思います」と、永易氏は語りました。
つまり、経営スピードを上げるには、組織風土改革とセットでなければダメだということですね。
永易氏の座右の銘は、「衆知経営」。「全員の知恵が経営のうえにより多く生かされれば生かされるほど、その会社は発展する」という、創業者の松下幸之助の言葉ですね。
「100年に一度の大変革期」といわれ、劇的な変化が進行中の自動車業界を相手に、永易氏はオートモーティブ社の経営スピードをいかに高め、競争力に結び付けるのか。
オートモーティブ社をはじめ、パナソニックの変革のストーリーは、これからが〝本番〟です。