ソニーグループは4日、電気自動車(EV)の市場投入を本格的に検討すると発表しました。世界最大級の家電IT見本市CESの開幕を前に、会長兼社長の吉田憲一郎氏が記者会見し、明らかにしました。新年早々、日本を勇気づけるニュースが飛び込んできたといっていいでしょう。
ソニーがEVの試作車「VISION-S」を公表したのは、2年前の2020年です。市販化の予定はないとしてきたソニーが今回、EVの事業化に踏み込んだのは、世界的な脱炭素の流れがあると見ていいでしょうね。
EVがいつ本格普及するかはまだわかりませんが、米EVメーカーのテスラを牽引役としたEV市場は急速に拡大し、いま手を打たなければ、日本は大きく後れをとるリスクがありました。
自動車メーカーだけでなく、IT企業による参入も相次いでいます。中国のネット検索大手百度(バイドゥ)やスマートフォン大手の小米科技(シャオミ)、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業などが続々とEV市場に名乗りを上げ、米アップルもEV事業に参入するといわれています。
EV戦国時代の様相を呈してきましたが、世界がEV化に雪崩を打つ中で、日本の自動車メーカーが岐路に立たされていたのは確かですよね。
その意味で、昨年12月にトヨタが2030年のEVの世界販売目標を350万台と大幅に引き上げたのは、ポジティブ・サプライズでした。そして、今回のソニーによるEV市場への本格参入検討のニュースです。まさに日本経済にとってポジティブ・サプライズの連続といっていいでしょう。
「これは、未来に向けた大きな一歩だ」と、吉田氏はCES2022で述べました。
ソニーのEVは、ソニーのブランドとするか、別ブランドを立ち上げるかは、現在のところ未定とされていますが、今春設立予定のEV事業を担う新会社「ソニーモビリティ」の本社は日本に置く予定です。
CES2022で発表したSUVタイプの試作車両「VISION-S 02」には、約40個のセンサーが搭載され、高速通信規格「5G」を採用しています。ソニーがEVを量産するようになれば、部品となる半導体事業を強めることができます。また、エンターテインメント、コンテンツなどの強みを生かしながら、未来のEVの絵を描くこともできます。
「モビリティを再定義するクリエーティブ・エンターテインメント・カンパニーになれる」と、吉田氏は語っています。
米アップルは、1月3日のニューヨーク株式市場で世界の上場企業としてはじめて時価総額3兆円を超えました。「iPhone」や「iPad」の売れ行きが好調なことや、「アップルカー」への期待が株価を押し上げているとされています。
日本でアップルに対抗できる企業といえば、ソニーしかありません。大手IT企業のつくるEVは、自動車メーカーのEVとは〝別物〟と考えた方がいい。となると、「アップルカー」に対して勝負できるのは、「ソニーカー」しか考えられません。ソニーは、アップルに勝てるか、いや勝つとしたらソニーしかないでしょう。
日本にアップルに対抗できる企業が存在することは、重要な意味があります。ソニーの自動車産業参入は、日本の自動車産業の未来にとっても、大きな意味を持つことになりそうです。