自動車業界の決算発表が本格化しています。世界的な半導体不足、新型コロナウイルスの感染再拡大による部品の供給制約など不透明な市場環境の中で、「想定を上回る業績をおさめることができた」と、日産最高執行責任者(COO)のアシュワニ・グプタ氏は述べました。中期計画で2021年度の目標とする営業利益率2%達成についても、「達成できると確信している」と、自信を見せました。
日産は8日、2021年4~12月期の連結決算を発表、売上高は前年同期比15.7%増の6兆1540億円、営業利益は1913億円(前年同期は1316億円の赤字)となりました。半導体供給不足の影響はあったものの、米国の良好な市場環境に加え、販売の質を向上させたことによるものです。
同時に発表した2021年度の業績見通しは、販売台数が前回見通しから変更なく380万台、売上高は半導体の供給不足や新型コロナウイルスの感染再拡大の影響から8兆7100億円に下方修正したものの、営業利益は前回見通しから300億円改善し2100億円、純利益は2050億円に上方修正しました。販売の質の向上、コスト管理の徹底によるパフォーマンス改善、円安の進行などを織り込んでいます。
「半導体不足、オミクロン株の拡大の中で、想定を上回る業績をおさめることができました」と、アシュワニ・グプタ氏は述べました。
日産といえば、米国を除く主要市場でガソリンエンジンの新規開発を終了する方針を固めたという報道があったばかりです。実際のところはどうなのか。エンジン開発から撤退するのでしょうか。
「欧州向けには、〝ユーロ7〟以降はガソリン車のエンジンはつくりません」と、グプタ氏は述べました。
ユーロ7とは、2025年にEU加盟国で導入が予定されている自動車の排ガス規制です。燃費で換算すると、各メーカー販売全車種の燃費を平均24.44km/L以上にする必要がある厳しい目標です。
「〝ユーロ7〟が入ってきますと、お客さまははるかに高い価格をガソリン車に対して払わなければならなくなります」と、グプタ氏は説明しました。
では、欧州以外ではどうなのか。
「ガソリンエンジンが市場のお客さまやビジネスにとって理にかなっている限り、続けていきます」と、グプタ氏は述べました。
グプタ氏は、「決めるのはお客さま」といっていましたが、すなわち、市場がある限り、ガソリンエンジン開発をやめることはないということですね。実際、日産は先日、V6ツインターボエンジンを搭載した新型フェアレディZを発表したばかりです。
また、新興国などではガソリン車の需要が根強くあります。グローバルに事業を展開する以上、多様な市場に目配りをしなければならないのは、当然ですね。
とはいえ、日産がEVへの投資を進めながら、ガソリンエンジンを継続していくのは、並大抵ではない。豊富な資金力があるとはいえない日産は今後、いかに電動化戦略を進めていくのか。グプタ氏の発言は、日産だけでなく、日本の自動車産業にとっても大きな意味をもっているといえるでしょう。
踏ん張りどころですよね。