トヨタの企業内訓練校「トヨタ工業学園」の卒業式が15日、社長の豊田章男氏の出席のもと愛知県豊田市のトヨタ本社で行われました。
トヨタ工業学園のルーツは1938年、クルマの製造に携わる技能者の育成を目的に設立された豊田工科青年学校です。以来80余年、トヨタは、同学園で将来の生産活動の中核となる人材の育成をつづけ、現場を支えるリーダーを輩出してきました。
学生たちは、寮生活を通して、プロになるための基礎を身につけます。将来の職場リーダーになるための幅広い基礎や教養のほか、実際の生産現場で社員からクルマづくりの安全と品質を学びます。
トヨタ工業学園に入るということは、すなわち将来はトヨタ自動車の社員になるということですから、学園では知識や技能だけでなく、心身を磨くことにも重きがおかれています。モノをつくる技術の前に、モノをつくる〝心〟を育てたい。そういう思いが、トヨタ工業学園にはあります。
とりわけ、特徴的なのは、整列、停止間動作、号令調整といった団体規律訓練です。全力を出す、確実にルールを守る、一つ一つの動作を極める――。モノづくり現場の基本のキですが、トヨタ工業学園は、それらを徹底して訓練します。
そもそもモノづくりは、多くの人が一定のルールのもとに動いてこそ、いいモノがつくれる。厳しい規律のもとに逞しい体と心を訓練する人づくりこそが、トヨタの現場を支えています。また、3年間の学園生活で身に着けた団体規律こそが、将来の職場のリーダーの力になっているんですね。
バブル崩壊後の低成長時代を迎え、日本の多くの企業が人材育成から手を引きました。トヨタ工業学園のような企業内訓練校も、ほとんど姿を消しました。
そうした中で、トヨタ工業学園は在学中、生徒手当を支給するなど、異色の人材育成を続けてきました。
トヨタの現場の強さの秘密の一つは、ここにあると思います。