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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニックコネクトに課せられた重責

パナソニックは4月1日、持ち株会社制へ移行、持ち株会社「パナソニックホールディングス」の傘下に8つの事業会社を設立して再スタートをきりました。そのうちの一つ、パナソニックコネクトは、パナソニックが長期停滞から抜け出し、スピード感ある経営に移行するための重要な役割を帯びているといっていいでしょう。


パナソニックコネクトは4月4日、都内で新会社としての発足会見を開催しました。代表取締役執行役員、社長、CEOの樋口泰行氏は、「パナソニックコネクトを財務的にピカピカの会社にする」と述べました。2024年度の事業目標として、売上高が2020年度比43%増の1兆1700億円、企業の稼ぐ力を示すEBITDAは同12倍の1500億円の達成を目指します。

パナソニックコネクトは、21年9月に完全子会社化した米ソフトウエア大手「ブルーヨンダー」とともに、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラなどのシステムを手掛けます。

ハードに強みを持つパナソニックが、ソフトウエアやソリューションを提供する企業に生まれ変わるための重要な試金石です。

17年4月に前身のCSN社専務に就いた樋口氏は、ソリューションビジネスへの転換に向けて、①風土改革、②ビジネス改革、③事業立地改革の3段階からなるCSN社の改革を進めてきました。とりわけ心血を注いだのは、社内の風土改革です。

樋口氏はもともと松下電器産業で働いていました。「MBA留学」をしたのち、アップル、コンパックなど外資系企業を経て、日本ヒューレット・パッカード社長、そして日本マイクロソフト会長を務め、17年4月、パナソニックに専務役員として戻ってきました。

樋口氏は会見で、「風土改革がいちばん大切。パナソニックのダメなところを〝まともに変える〟ために力を注いだ」と語りました。パナソニックのダメなところを、「古い、思考停止、スピードが遅いこと」と樋口氏は指摘しましたが、それはかつて樋口氏自身が消耗し、組織から心が離れていった理由でもありました。

樋口氏は過去5年間、CSN本社の東京移転、オフィスのフリーアドレス、社員の服装改革などを矢継ぎ早に実行してきました。それは、CNS社の風土改革と同時に、パナソニックそのものの変革でもありました。

実際、樋口氏率いる組織のマインドはかなり変わったといっていいでしょう。まるでIT企業のようなフリーアドレスのオフィスには、パナソニックとはまったく違う空気が流れていますし、ジーンズにセーター姿の社員がふつうに働いているのを見ても、パナソニックの変化を実感させられます。

ただし、パナソニック全体のカルチャーが変わったかといわれれば、まだまだといわざるを得ません。大企業病にむしばまれた企業体質は、おいそれと変わるものではありません。

期待されるのは、パナソニックコネクトをリード役にして、パナソニックが変わることです。つまり、パナソニック社員の意識と風土の破壊です。パナソニックコネクトはその〝お手本〟になる。それは、停滞から抜け出すための策でもあります。

その意味で、パナソニックコネクトへの期待はいやがおうにも大きくなります。樋口氏は今後、いかなる経営手腕を発揮するのか。その成果は、パナソニックにどのような影響を与えるのか。樋口氏には、想像以上に大きい重責が課せられているといえそうです。

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