日産自動車は8日、2028年度の実用化を目指して研究開発を行っている全固体電池の積層ラミネートセルを試作生産する設備を公開しました。EV普及の切り札といわれる全固体電池。日産があえて同設備を公開したのは、量産EVのパイオニアとして電池の開発技術に自信があるからにほかなりません。
全固体電池は、可燃性の有機電解液を難燃性の固体電解質に置き換えた電池です。リチウムイオン電池と比べて安全性が大きく改善されることや出力を高められることから、各社が開発に総力をあげています。
全固体電池が実現すれば、現在の電気自動車のバッテリーの半分の大きさで充電がまかなえます。つまり、ピックアップトラックなども含めた幅広いセグメントへの搭載も期待できるんですね。
「いまは電池の占めるスペースが大きいわけですが、全固体電池ではそれが2分の1になる。クルマのデザインの自由度は格段にあがります」と、日産執行役副社長の中畔邦雄氏はオンライン説明会の席上、述べました。
電池の性能向上のカギは、材料選定とプロセス技術です。日産は、電池材料、プロセスの設計、評価、解析にかかわる専門家との取り組みを行っています。たとえば、電池材料の選定では、米航空宇宙局「NASA」と提携し、高速材料探索などを行っています。また、正負極材料と固体電解質間の高密度で均一な「界面」の形成など、技術のブレークスルーにも取り組んでいます。
日産は2010年、世界に先駆けて量産EV「リーフ」を投入し、EVのパイオニアとして電池の技術を蓄積してきました。全固体電池の実用化に向けては、24年度までに横浜工場内に同電池の量産化に向けたパイロットラインを設置、28年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVを市場投入する計画です。
日本勢が研究をリードしているといわれる全固体電池。トヨタも同電池の開発を手掛けています。全固体電池は、日本の自動車産業の命運のカギを握っています。