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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタを襲う2つの荒波

「今年に入って大きく潮目が変わった」と、11日の記者会見でトヨタ自動車社長の豊田章男さんは語りました。トヨタに何が起きているのでしょうか。
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トヨタ自動車が11日に発表した2016年3月期決算は、売上高が前年比4.3%増の28兆4031億円、営業利益が同3.8%増の2兆8539億円、純利益が同6・4%増の2兆3126億円で、過去最高益を3年連続で更新しました。円安効果に加えて、米国での販売好調が要因です。

ところが、17年3月期の業績予想は、一変します。売上高6・7%減の26兆5000億円、営業利益40・4%減の1兆7000億円、純利益35・1%減の1兆5000億円――の見込みです。5期ぶりの減益となり、2兆円を割り込むことが予想されています。

利益の押し下げ要因は、為替相場が円高基調に反転したことです。円安基調のもとで収益を拡大してきたトヨタを襲う、一つめの“荒波”です。

「これまでの数年間は、為替の追い風がありました。追い風参考記録です。風が止んで、等身大の姿が見えることになります。いままでのセオリーは、これからのセオリーにはなりません。意志の強さが本物かどうかが試される年になります」と、社長の豊田章男さんは、決算会見の席上、語りました。

為替による減益は、あくまでも外部要因であり、トヨタがどうこうできるわけではありませんね。では、もう一つの“荒波”は何か。トヨタ自身の問題なんですね。ズバリ、トヨタが大きくなりすぎたということです。大企業病というより、巨大組織の弊害といった方がいいでしょう。

また、私は、以前から“1000万台の壁”を指摘してきました。トヨタは現在、その壁にぶちあたっています。

章男さんも会見の中で語っていましたが、300万台、600万台、1000万台では仕事の仕方が違ってしかるべきです。いま問われているのは、1000万台にふさわしいオペレーション&マネジメントです。

トヨタの組織の長所はもともと、エンジン、車体、生産、技術などの機能セクションがきわめて強い力を持っていることですね。しかし、各機能セクションが強すぎると、調整に時間がかかります。経営のスピードは落ちますね。部分最適が優先され、全体最適が失われます。

結果、章男さんのいう「もっといいクルマづくり」に支障が生まれます。そこで、トヨタは組織改革に乗り出しました。

それが、この4月に行われた、製品を軸にしたカンパニー制への移行です。

「機能の力が強かったことで、意思決定のスピードが遅くなっていました。この4月からカンパニー制を敷き、現場に近いリーダーが意思決定をする仕組みにしました」
と、豊田章男さんは、記者会見の席上、述べました。

小さなカンパニーにすることによって、意思決定のスピードを上げ、小回りのきく自由度の高い組織をつくることが狙いです。

また、組織改革のもう一つの狙いは、次世代を担う経営人材の育成です。

専務役員を各カンパニーのプレジデントに任命し、100万台から数百万台の自動車メーカーの経営者としての経験を積ませる仕組みをつくっています。

「社長になって、どれだけの時間軸で考えるか。20年、30年だと思いました。それから、タスキは両手で渡さなければいけないと思っています。カンパニー制の中でいろいろな議論をしていきます。その中で、どんなリーダーが出てくるかということだと思います」
というのは、章男さんのコメントです。

要するに、トヨタを根底から変えるのは、時間がかかるということなんですかね。悩みは深いといえそうですね。

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