Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

マニラに「渋谷行バス」が走るわけ

世の中、リサイクル時代です。
以下は、日本をめぐるグローバルなリサイクルの話です。

インドネシアの首都、ジャカルタを、
JR埼京線の旧車両が走っています。
昨年9月以降、JR東日本は、ジャカルタ首都圏鉄道株式会社に、
埼京線で使用してきた車両180両を、安く譲渡しているのです。
埼京線の緑色の帯の車両は、ジャカルタでは、
赤い地に黄色い帯の、いかにも南国チックな色に塗られています。
さらに、横浜線の車両約170両も、先月末から譲渡が開始されました。

しかし、電車の車両というものは、
まったく違う環境にポンと譲渡して、すぐに走れるものなのか。
そんなことはないでしょう。
まず、レールの幅が必ずしも同じとは限りません。
電圧が違えば、不都合が出てきます。
ホームの高さが大きく違えば、乗り降りが不便です。
しかし、ジャカルタ首都圏鉄道では、何の不都合もないようです。

というのは、かれこれ30年ほど前、国鉄時代末期のこと。
日本から、鉄道の技術者がインドネシアに派遣され、
電車を走らせるための技術協力をしたのです。
したがって、ジャカルタの線路の幅や電圧などの基本構造は、
日本と同じだというわけです。
インドネシア当局の認証が得られれば、大きな手を加えなくても、
そのまま走れるんだそうです。

電車の耐用年数は、約20年といわれますが、
日本製の家電が、耐用年数をこえても壊れないのと同じで、
自動車や電車も、耐用年数を迎えたからといって、簡単には壊れません。
実際、日本でさんざん使ったタクシーを、
アジアに払い下げるという話を耳にします。

会社によって違うようですが、タクシーは40万km以上走って、
廃車になります。そのタクシーは、アジアに輸出され、
第2の“お勤め”をします。バスも同じです。
フィリピンの首都マニラを、“渋谷行”のバスが走っていた
という話があるのは、以上のような理由からです。

また、日本のユーズドカーは、東南アジアの新興国で重宝されている。
ロシアのシベリア地区でも、品質がいいというので、
日本の中古車は人気が高いといいます。

このほか、衣類についても、同じことがいえます。
例えば、以前に聞いた話ですが、バングラディシュには、
日本人のネームが入った背広が出回っているといいます。
古着として、はるかバングラディシュで、
これまた第2の“お勤め”をしているわけです。

それから、廃棄物も海を渡っているといわれました。
資源が埋もれている家電ゴミは、究極のリサイクルですね。
日本の家電製品のゴミを、中国の“ゴミ商人”が、
高値で買い取っていくという話でした。
あれは、いま、どうなっているんでしょうかね……。

まあ、日本の「MOTTAINAI」精神からいえば、
耐用年数を過ぎたからといって、解体、処分というのは、
まさしく、もったいない。
大量生産・大量消費の高度経済成長時代の名残りか、
いまだ“使い捨て”文化が横行する日本社会ですが、
意外な形というか、意外なところで、よその国のお役に立っているわけですな。

ページトップへ