昨日、トヨタは、テレマティクスサービスを全面刷新すると発表しました。
新しいサービスの名称は、「T-Connect (ティーコネクト)」です。
今夏以降に発売されます。
ポイントは、スマートフォンやタブレットとの連携。
音声対話型ロボットオペレーターサービス「エージェント」によって、
運転しながら対話形式で、条件を追加しながら経路などを検索できる。
運転手が「空いている駐車場を教えて」などと問えば、
「3件あります」「いちばん近いのは?」「○○です」など、
複雑な検索に音声で答えてくれる。
会見場では、「T-Connect」の機能をわかりやすく説明するために、
「明治通り沿いのそば屋を探して!」と設定していましたが、
実際のところ、カーナビに「そば屋を探して!」と頼むユーザーは、
そんなに多くいないと思います。
まあ、セールスマンが車を運転していて、
お昼時にランチをするために、
「そば屋を探して」というシーンは考えられるでしょう。
しかし、少なくとも、レストランやそば屋を探すことに
大きなニーズがあるとは思えない。
むしろ、ドライバーとして非常にありがたいのは、 「先読み情報サービス」です。
ドライバーの走行履歴情報などのビッグデータを活用し、
行き先を予測したうえ、渋滞や事故情報を踏まえて
「いつもの経路が渋滞しているので、 ○○通りを通って迂回したほうがいい」
などと案内してくれます。
これは、ユーザーにとって、必要性が高い。
テレマティクスサービスに求められるのは、
本当にユーザーが必要とするサービスを見つけ、
それを、簡単に、ストレスなく、快適に使えるようにすることです。
車載システムの開発は、米IT大手のアップルやグーグルも進めています。
したがって、自動車メーカーとIT企業との主導権争いになるという話もありますが、
アプリやビッグデータなどの分野で、
クルマ屋は、本業のIT屋にかなうわけがありません。
逆に、IT屋は、エンジンやブレーキの制御ソフトなど、
車の基本機能にかかわるソフトウェアにおいて、
簡単にクルマ屋にかなうわけがありません。
問われるのは、クルマ屋とIT屋が、いかに協業するかです。
そのあたり、トヨタは冷静に見ていると思います。
その際のポイントは、「オープン」であることです。
トヨタは、7月以降、「T-Connect」ナビ専用のアプリ
「APPS」の開発キットを、 コンテンツ事業者に無償公開します。
「TOVA(トヨタ・オープン・ビークル・アーキテクチャー)」
と呼ばれるスキームによって、
オープンな環境を構築しているのです。
つまり、誰でも「T-Connect」用アプリを開発でき、
ユーザーは、彼らから提供されるさまざまなアプリを
ダウンロードしてカーナビの機能を向上できる。
これは、トヨタは賢い選択をしたといっていいでしょう。
さらに、トヨタは、アップルが提供する車載システムを
導入する計画もあるようです。これも、正しいと思いますね。
テレマティクスサービスによって、経路の検索だけでなく、
最適な保険料の算出や、エアコンの操作など、
さまざまなことができるようになります。
今後、機能は、ますます多様化するでしょう。
ただし、間違ってはいけないのは、「あれもできる、これもできる」と、
多機能をきわめても仕方がないということですよ。
トヨタ社長の豊田章男さんは、社長就任以来、
「お客様に笑顔になっていただきたい」と繰り返しいっています。
テレマティクスサービスも、 ポイントは、顧客目線に尽きると思いますね。