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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

サムスン電子の減収減益をどう見るか

サムスン電子の4~6月期の業績は、
速報値によると、売上高が前年同期比約10%減少しました。
連結営業利益も、同約24%減少し、
7兆2000億ウォン(約7200億円)です。
9年ぶりの減収減益となります。さて、これをどう見るか。

減収減益の理由の一つは、サムスン電子の稼ぎ頭である
スマートフォン事業がふるわなかったことですよ。
高付加価値のスマホ市場は、先進国市場を中心に飽和状態です。
新興国のスマホ市場も、成熟期に入りつつあり、
中国をはじめとする新興国メーカーが低価格商品で攻勢をかけています。

一つの見方として、サムスン電子のスマホ依存、
一本足打法のリスクが、顕在化しつつあるといえます。
サムスン電子は、ポスト・スマホとなる次世代商品を開発できていない。
スマホ市場が飽和したいま、経営に黄信号が灯ったと見ることができるでしょう。

加えて、サムスン電子は、会長の李健熙(イ・ゴンヒ)氏が倒れて、
2か月が経過しています。
おそらく李健熙氏は、以前と同じような形での復帰は難しいでしょう。
これも、サムスンのピンチですよね。

代替わりが目前のいま、グループの中核企業の業績低迷は、
まさしく大きなリスクだという見方ができます。
タイタニック号ではありませんが、
大きな船であっても、沈むときは一気に沈みますからね。

以上は、常識的な見方です。
果たして、そうでしょうか。
ものごとにはオモテとウラがあります。
一面的な見方はしないほうがいいでしょう。
では、ウラから見るとどうでしょうか。

というのは、13年度のサムスン電子の営業利益は、
過去最高の36兆7700億ウォン(約3兆6千億円)でした。
トヨタも13年度は過去最高益でしたが、2兆2921億円ですから、
サムスン電子がけた違いの営業利益を稼いでいることがわかります。

3兆6000億円の利益が、通年で、たとえ25%減ったとしても
2兆7000億円です。昨年度のトヨタより多い。
一時的に収益が落ち込む可能性はありますが、
少々稼ぎが減ったからといって、そうそう慌てることはないでしょう。
営業利益率は、今年の4~6月期にも13.8%と、十分出ています。
三代目の李在鎔(イ・ジェヨン)体制を
長期的な視点をもって構築していく余裕はあります。

さらにいえば、経営体制が大きく変わろうとしている時期だからこそ、
むしろ、業績が落ちたほうが、新しい経営者のためと見ることもできます。

日本企業でいえば、豊田章男氏は、社長就任時、
リーマン・ショック後、約4300億円の大赤字だったうえ、
世界的な品質問題や東日本大震災、タイの大洪水など、
数々の苦難に襲われ、逆境のなかの船出となりました。
しかも、円高など六重苦にもがきました。
しかし、そこから、見事にトヨタを立ち直らせたことで、
求心力を強めると同時に、経営者として大きく成長しました。

現在の韓国経済も、ウォン高に悩んでいます。
朴槿恵(パク・クネ)大統領の政策は、
サムスンをはじめ、大手企業には逆風です。
李在鎔氏は、豊田章男氏と同様、外部環境は厳しい中での船出となります。

さらに、スマホの減速でサムスン電子の経営は厳しいんですが、
しかし、かりに、李在鎔氏が、トップ交代後、
サムスン電子を立ち直らせることができれば、
心配されている実力問題も解決しますし、
大きな求心力を得ることができるでしょう。

さて、今後、サムスンはどうなっていくのか。
5年程度の長いスパンで見ることが大事でしょうね。
あまり、結論を急いで見ないことですよ。

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