パナソニックとソニーいう、日本を代表する電機大手2社が、
人事制度、賃金制度を10年ぶりに見直します。
パナソニックは、今年10月から、
「年功」の要素を廃止し、成果を大幅に反映した給与制度にします。
部課長制を復活させて、権限、責任を明確にするといいます。
ソニーは、役割に対する報酬をより明確に打ち出した
「ジョブグレード制度」を導入し、やはり「年功」の要素を廃止します。
若手登用の仕組みを用意し、20代の課長級への起用も目指すといいます。
8月から労働組合と協議を開始し、来年度からの導入を目指します。
両社とも、総人件費は減る見通しといいます。
グローバルな市場競争、人材獲得競争を意識して、
今回の改革にいたったのでしょう。
若手登用などの人事制度改革は、人材流出を避ける、
いわば、リテンションの効果も期待できます。
しかし、両社の改革は、あまりに遅い、という印象です。
そもそも、改革自体が10年ぶりですからね。
これじゃねェ……、サムスンに勝てません。
ご存じのように、ここ10年の間に、パナソニックやソニーを追い抜いて、
いまや世界最大の電機メーカーとなったのが、サムスン電子です。
サムスンが賃金制度を「年功序列」から「能力主義」に変えたのは、
20年以上前の、1993年のことです。
サムスン会長の李健熙(イ・ゴンヒ)氏が、
「新経営」を掲げたのをきっかけに、
「新人事制度」として、人事制度を一新したのです。
サムスンは、その後も、98年には「能力主義」から「成果主義」に、
08年には「成果主義」から「価値主義」に、
人事・賃金制度を大きく改革しています。
さらに、問題点をつねに洗い出して、毎年のように小さな改善を加えています。
サムスンは、世界の競合やグローバル企業の人事・賃金制度を
ベンチマーキングし、いいところを取り入れます。
さらに、人事や労務に関する世界的なシンポジウムや学会を毎年チェックし、
世界的な人事のトレンドを取り入れて、制度を改善しています。
パナソニックやソニーに限らず、日本企業の多くは、
人事制度に、サムスンほど力を入れてきたとは思えません。
ただ、今回、両社は、年功制度を廃止するとして、
成果主義制度を導入するかといえば、その点は、いまひとつよくわかりません。
方向性としては、そうなんでしょうが、
日本企業は、一度、成果主義賃金導入に失敗しているだけに、
そのあたりは曖昧です。ここは、気になる点ですよね。
それから、人事・賃金制度の改定後、制度がうまく機能しているか、
定期的にしっかりとチェックし、問題点を改善して、
より洗練された新日本式賃金制度を、
これからつくりあげていくことができるかどうか。
パナとソニーの年功制度を廃止する賃金制度の改革は、
まだ、そのはじまりに過ぎませんね。