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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日産・自動運転技術「プロパイロット」市場投入

日本の自動車メーカーでは、日産以外にはできない決断です。
日産は、8月下旬に発売する新型「セレナ」に、自動運転技術の「プロパイロット」を搭載すると発表しました。

この「プロパイロット」を利用できるのは、高速道路のみ、かつ車線変更はなし。すなわち単一車線で、渋滞走行と、長時間の巡航走行時に自動運転できます。自動運転のレベル2の技術です。渋滞走行でアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動制御する技術の導入は、日本の自動車メーカーでは初めてです。

具体的には、「プロパイロット」とは、どんな技術なのか。
実際に、神奈川県の日産追浜テストコース「グランドライブ」内で、運転席に乗って体感しました。大変、興味深いものがありました。渋滞走行を想定し、前方を走るクルマを追走する形で行われました。
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※試乗会の様子

コースに乗った後は、ハンドルに手を添えているだけで、基本的には、アクセルもブレーキもいっさい踏まない。カーブもハンドルが勝手に回る。これは“ラクチン”だと実感しましたね。しかも、運転技術は上級者並みの乗り心地です。

ただ、試乗してみて感じたのは、ユーザーは「プロパイロット」に慣れるのに、少し時間がかかるのではないかということです。最初は、何もしないのに動くクルマに、違和感があるハズです。
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※「プロパイロット」体験中

もっとも、発表会の席上、日産副社長の坂本秀行さんは、次のように話しました。
「自動運転というよりは、運転支援技術です。つまり、すべての条件をカバーできるものではございませんし、逆にいうと、運転者の不注意や操作ミスによって起こる事故や問題に対してはかなり大きく貢献できると思います」

日産の自動運転技術のロードマップによれば、今年、高速道路の単一車線限定の機能、18年に高速道路の複数車線すなわち車線変更できる機能、20年に市街地すなわち一般道の交差点まで含めた自動運転機能を市場投入するといいます。
つまり、今回の「プロパイロット」機能は、完全な自動運転機能の市場投入に向けた“第一歩”という位置づけですね。

今年に入って、米テスラ車の「オートパイロット」機能使用中の事故が相次いでいます。世間の目は、自動運転に懐疑的になりつつあった。その状況下で今回の決断ができるのは、日産の自信の表れとみることもできます。
重大事故は起きないと、確信があるからこそ、市場投入する。
単に「やっちゃえ、日産」という“エイヤ”の判断ではないのは、間違いありません。

例えば、テスラ車の死亡事故では、逆光によって前方のトレーラーを認識できなかったとされていますが、その場合、「プロパイロット」ではどうなるのか。
「ダイレクトな西日を受けてしまうと、カメラが、目がくらむように“見えなく”なってしまうことがあります。その場合、カメラが、いま西日がきていると自動的に認識して、制御できる状態ではないということを、7インチの大型ディスプレイに日本語で表示したうえで、システムを解除します。つまり、ドライバーに、システムの限界がわかりやすく伝わるように、さまざまな工夫をしております」
と、電子技術・システム技術開発本部、AD&ADAS先行技術開発部長の飯島徹也さんは話しました。

運転者がハンドルを離している場合には、クルマが「ハンドルを握ってください」と注意喚起する。それでも握らなければ、より強い表現で警告する。つまり、運転者にクルマを過信させないための仕組みですね。

坂本さんは、「プロパイロット」の特長として、次のように表現しました。
「これだけ高度な、ドライバーの方と自動車が対話しながら動くシステムは初めてかもしれないと思います。クルマがドライバーの方に運転をお願いしたい場面や、ここはもうクルマだけではカバーできないという場面を、事前に“ワーニング(警告)”を出すなどして知らせます」

日産は、日産車がかかわる交通事故による死亡・重傷者数を、2015年に1995年比半減を目指し、11年に4年前倒して実現しました。2020年までに、さらに半分、すなわち95年比4分の1を目指すといいます。

「ご承知のように、いま、エマージェンシーブレーキが急激に世界的に普及しておりますが、『プロパイロット』はそれにとって代わる価値が十分にあると思っています。コスト的にも機能的にもはるかに上ですし、自動ブレーキよりもはるかに安全性を確保できます。自動ブレーキが急激に事故を減らしているのは大きな事実ですが、このシステムも、同様以上に大きな効果を果たすものと信じております」
と、坂本さんは強調しました。

ちなみに、日産は、上級車種を中心に「プロパイロット」を搭載する予定です。各種センサー、カメラなどの設備が必要ですが、新型「セレナ」の「プロパイロット」搭載車の価格は300万円を切るといわれています。価格設定は、普及に大きく関係しますからね。

まだまだ問題はありますが、自動運転技術の実用化には、交通事故撲滅の大義があります。何としても、前に進めていかなければいけません。誰かが、はじめの一歩を踏み出さなければ、躊躇するばかりでは始まらない。
その意味で、日産の決断は、評価されるべきだと思います。

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