ホンダグループの八千代工業の「陸上競技用車いすレーサー」には、
日本の技術の粋が盛り込まれています。
「陸上競技用車いすレーサー」とは、空気抵抗をおさえた低姿勢で乗る
競技用車いすです。3つの車輪で高速走行します。
八千代工業は、ホンダR&D太陽と本田技術研究所の協力により、
国際レースに参戦する競技者向けに「陸上競技用車いすレーサー」
を共同研究、製造、販売しているんですね。
「カーボン技術なくして、この製品はつくれませんでした」
と、八千代工業管理本部総務部広報ブロック主幹の若林大輔さんは、
「国際福祉機器展2014」の会場で語りました。
ご存知のように、カーボンは、日本がリードする21世紀の革新素材といわれます。
比重は鉄の4分の1、比強度は鉄の10倍程度です。
61年に発見され、71年に日本企業が世界ではじめて生産を開始しました。
自動車用途では、軽量化による燃費向上、CO2排出量の削減効果が
期待されているほか、飛行機の省資源、省エネルギーにも貢献しています。
カーボンの特徴は、とにかく軽くて強いことです。
若林さんに促されて、会場でフラッグシップモデル「極<KIWAMI>」
の車体をもちあげてみましたが、拍子抜けするほどの軽さです。
フラッグシップモデル「極」は、超軽量カーボンホイールを装着した場合、
重量は8キロほどです。
国際レースを戦う競技者に満足してもらえる最高峰の車いすレーサーは、
カーボンによる軽量化が実現できたからこそ、つくれたといっていいでしょう。
八千代工業は、「陸上競技用車いすレーサー」の開発を積み重ね、
カーボンにまつわるさまざまな技術を蓄積しています。
「目指すのは、2016年リオデジャネイロパラリンピックです」
と、若林さんはいいます。
この10月、八千代工業は、車いすアスリートの土田和歌子選手と
雇用契約を結びました。
目標は、リオデジャネイロでの金メダル獲得です。
カギを握るのは、車いすレーサーの進化と選手の技術向上です。
八千代工業は、2012年以降、ホンダの福祉車両の自操車の開発から生産
を担っています。
「陸上競技用車いすレーサー」の技術が、ホンダの福祉車両にも波及するのは
いうまでもありませんね。
いってみれば、F1レースの技術が、市販車に波及効果をもたらすのと
同じといっていいですよね。