10月18・19日に福島県郡山市で開催された
「第9回B‐1グランプリ」は大盛況を博したようですが、
ご当地グルメといえば、わがふるさと名古屋も負けていませんな。
きしめんに味噌カツ、天むすにひつまぶし、手羽先にエビフリャーだがね。
いわずと知れた「名古屋めし」の話ですわ。
じつは、名古屋市では11月16日まで、
「なごやめし博覧会2014」が開催されています。
同博覧会は、「なごやめし博覧会実行委員会」
(名古屋市、KADOKAWA、名古屋観光コンベンションビューロー)
が主催する、全国最大級の飲食店回遊型イベントです。
名古屋市内280以上の店舗が参加し、「博覧会専用メニュー」を用意する。
お客さんは、専用チケット(5枚つづり3000円、2枚つづり1240円)
を購入し、名古屋めしをお値打ち価格で食べ歩くことができる仕掛けです。
このイベントは、「名古屋めし」の知名度を活用した、
地域活性化の試みといっていいでしょうね。
ご存じのように、名古屋には意外と観光スポットが少ない。
最近、愛知県庁と名古屋市役所が、昭和に立てられた現役庁舎として
初めて国指定重要文化財に登録されましたが、
まあ、知名度はゼロに近いでしょう。
全国的に知られているのは、名古屋城ぐらいのものではないでしょうか。
観光の起爆剤として、いつの頃からですか、
「名古屋めし」をPRするようになりました。
さて、ここからが今日の本題です。
「なごやめし博覧会」の目玉はズバリ、
「新なごやめし総選挙」――。どういうことか。
2014年度は、名古屋市内の飲食店37店舗が
オリジナルメニューを考案し、立候補。
お客さんのウェブ投票により、
「新なごやめしグランプリ」を決定するイベントですがな。
18日付の中日新聞名古屋市版に「新なごやめし 圧巻の味」と題する
食べ歩き記事が掲載されていましたが、これが確かに“圧巻”というか、
名古屋人以外の人からすると、“なにッ、それって”となるものばかり。
名古屋出身のワタシからして、どうかな……と思いますよ。
例えば、カレーハウスCoCo壱番屋の「名古屋赤みそカレー」や、
鳥開総本家の「名古屋コーチン親子丼」など、
ただ、ここらあたりまでは、まあまあオーソドックスで、食欲をそそりますわ。
しかし、そこはミエっぱりな名古屋人。数々のサプライズを用意しているんですな。
すこし長くなりますが、“珍食”を紹介しましょう。
例えば、栄の居酒屋・しゃちほこ屋の「黄金のえびしゃち」は、
海老フライをたいやき生地で包み、そのうえに金粉をまぶして、
金のシャチホコに見立てた一品です。
写真をみただけでは何がなんだかよくわかりませんが、
地元以外の人は、度肝を抜かれますでしょう。
また、金山の居酒屋・八宣の「ど手羽」は、手羽先の揚げ物に、
牛スジやモツを味噌だれで煮込んだ
名古屋名物「どて煮」をかけたメニュー。
それから、中川区の喫茶店・銀座珈琲店には、
名古屋めしの代表格「あんかけスパ」にカツをのせた
「厚切りロースかつあんかけスパ」なるメニュー。
濃いものに濃いものを重ねて、さらに濃くするところは、
まあ、味噌カツの伝統を継承しているといったところですかな。
ほかにも、博覧会のホームページを見ると、
ハンバーグや半熟卵が乗ったごはんに、
あんかけスパのピリ辛ソースをかけた「名古屋あんかけロコモコチリ辛ライス」、
味噌カツにお茶をかけたり、わさびをつけたり、
ひつまぶしのような食べ方を楽しむ「味噌カツまぶし膳」など、
一風どころか、相当怪しげ、かつ、変わったメニューが紹介されています。
食材から食べ方に至るまで、
どのお店もあの手この手で創意工夫しているのはわかるのですが、
新しすぎて理解しがたいというか、
ここはひとつ、怖いものみたさでチャレンジするとか、
いや、食べる前から胃もたれ気味というかなんというか……。
さすがのワタシも、そもそも名古屋らしさとは何だったのかと、
「うーん」と唸ってしまいましたよ。
ただ、愚考するに、いや、超プラス思考で考えるに、
食をふくめて、文化が進化を続けるためには、
こうした実験精神が欠かせないのも確かでしょう。
というのは、進化の前提は多様性にあるからです。
システムの中で生じたさまざまな変異が、
時代環境のなかで検証され、吟味され、選択されていく。
こうしたプロセスなくして、文化は進化しませんわな。
だいいち、ダイナミズムというか活気が生まれませんな。
この点、つねに変異をつづける「名古屋めし」は、
まだまだ進化の可能性を秘めていると思います。
尾張名古屋は“食”でもつといったところでしょうかね。