“M&Aキング”こと永守重信社長率いる日本電産が12日、
ドイツの自動車部品メーカー、ゲレーテ・ウント・プンペンバウ
(GPM)の買収を発表しました。
狙いは、どこにあるのでしょうか。
近年の環境や安全意識の高まりや情報化の進展にともない、
自動車の電子化、電動化が急速に進んでいます。
とりわけ、ハイブリッド車や電気自動車には、車両の駆動力や
電力回生を担う主機モーターのほか、電動コンプレッサ、
電動ウォーターポンプ、電動オイルポンプなどが搭載されています。
実際、一台の自動車には100個以上のポンプが使われています。
つまり、自動車の環境性能の向上、安全化、情報化が進めば進むほど、
車載用モーター、ポンプの需要が大きくなるということですね。
GPMは、冷却水や潤滑油を供給する自動車用ポンプメーカーで、
独フォルクスワーゲンやダイムラーなどにさまざまなポンプを供給しています。
日本電産はもともと、モーターや電子制御部品が強い。
GPMのポンプを組み合わせれば、電動式ポンプシステムとして
大手自動車メーカーに供給する道がひらけます。
なにしろ、電動ウォーター、オイルポンプは、2020年に2倍を超える
市場になるといわれています。
「ボッシュのようになりたい」
永守さんは、かねてからそういっていました。
ボッシュといえば、世界最大シェアをもつティア1サプライヤーで、
2013年度の売上高は約406億ドルです。
日本電産は、2015年度売上高1.2兆円、営業利益率15%の中期戦略目標のもとに
ビジネスポートフォリオの転換を進めています。
そのポイントは、従来の主力商品「HDD向け精密モーター」から、
一般モーター、車載モーターへの転換です。
2013年10月、ホンダ子会社ホンダエレシスを買収したのもその一環です。
日本電産がもともと得意とするモーター技術に
エレシスのECU技術を統合し、システム・モジュール化して、
いわゆる付加価値をつけて自動車メーカーに提供しようという狙いがありました。
今回のGPMの買収は、ティア1メーカーへの布石といってもいいかもしれません。
VWグループやダイムラーとの取引関係が強いGPMの獲得により、
欧州での営業を強化できるからです。
そうなれば、欧州の自動車メーカーの先行ニーズを把握できる立場になります。
今後のビジネスに有利であることは間違いありません。