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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

『サムスン・クライシス』② コーポレート・ガバナンスの実際

サムスンは、カリスマ経営者・李健熙さんが会長に就任した1987年以降、
巨大企業への階段を一気にかけあがりました。
ただ、その意思決定メカニズムや組織運営はかなり不透明、
という指摘を絶えず受けています。
サムスンのコーポレート・ガバナンスはどうなっているのでしょうか。

昨日のブログでも登場していただいた、
張相秀さん(現亜細亜大学特任教授・元サムスン経済研究所専務)は、
「会長が一人で決める体制ではないからこそ、サムスンはうまく回っている」
「サムスンの経営は、専門経営者による“集団経営”で成り立っている」
と語ります。
日本では李健熙さんの強権ぶりばかりが強調されていますから、
張さんの言葉は意外にひびくかもしれません。

張さんによると、サムスンの舵取りを行うのはオーナーの李健熙さんですが、
その指示命令を確実に実行するために、3つの組織が存在します。
グループ全体をコントロールする「未来戦略室」。
調査研究によって、素早い意思決定を支える「サムスン経済研究所」
新たな経営戦略や新規事業を執行する「グループ30社」が、それです。

このなかで、しばしば非難の的となるのが「未来戦略室」です。
韓国でも、権限があいまいなのに、絶大な権力を持っているとして、
何度かやり玉にあげられてきました。

「未来戦略室」は会長直属の非公式組織で、
グループ会社の社長候補と目される超エリートが出向のかたちで集められます。
最高司令官の参謀本部として、グループ全体を統括する立場から、
会長の指示をグループ各社に伝えたり、確実に実行されているかをチェックする。
日本でいうホールディング・カンパニーのような役割を果たしていると考えれば、
不透明というわけではありません。

それでもなお、サムスンが一般的な株式会社に見えないのは、
肝心の支配構造がよくわからないからではないでしょうか。
例えば、李健熙さんの保有するサムスン電子株は数%に過ぎませんが、
サムスンエバーランドが持ち株会社のような役割を果たすことで、
グループ全体を支配するなど、「循環出資」のかたちをとっています。

サムスンはオーナー主権のガバナンスが行われており、
株主による透明なガバナンスが機能しているとは到底いえないのではないか……と。
張さんは次のように語ります。

「コーポレート・ガバナンスとは、
会社を成長させる仕組みでなければいけないと思います。
アジアには、アジアのモデルがあっていいんじゃないですか」

詳しくは、今月24日に文藝春秋から発売される、
張さんとの共著『サムスン・クライシス』をご一読ください。

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