報道によれば、米EV(電気自動車)メーカーのテスラ・モーターズは、今年中に、日本国内において、EVに無料で急速充電できる設備を30か所程度に増やします。将来的には、数百か所まで増やす計画で、日本で長期的に投資を増やすといいます。
なぜ、いま、EVなのでしょうか。国内市場では、EVの存在感は高くありません。実際、伸び悩んでいます。日本では、エコカーといえば、ハイブリッドカーが一般的であり、次世代エコカーといえば、トヨタが昨年12月に市販を開始したFCV(水素電池車)への関心が高まっています。
しかし、では、世界市場はどうかといえば、欧州や米国では、EVは販売を伸ばしています。理由の一つは、欧州や米国で強まる環境規制です。欧州では、自動車メーカーは、販売した新型車の平均CO2排出量を、1kmあたり120g以下にする規制が設けられていて、規制値を超えると罰金を払わなくてはいけません。この規制は、2021年には1kmあたり95gにまで強化される見通しです。
米国でも、こうした環境規制が、カリフォルニア州などを中心に強まっています。
これらの環境規制をクリアするため、自動車メーカーは、CO2排出量の平均値を大きく下げられるEVやPHV(プラグインハイブリッド車)の商品化に力を入れています。加えてEV市場は、米アップルの参入がささやかれたり、これまで高級EV専門だったテスラが、17年に普及価格帯のEVを投入するなど、話題に事欠きません。GM(ゼネラル・モーターズ)は、17年ごろ、1回の充電で320kmを走れる手ごろな価格のEVを発売予定です。フォード、BMW、VW(フォルクスワーゲン)など、世界の大手自動車メーカーも、続々と新型EVやPHVの投入に動いています。
各社がEVに注力すれば、充電設備などのインフラは、当然、早く整うでしょう。日本メーカーも、日産の次世代「リーフ」をはじめ、三菱自動車、トヨタ、ホンダなど各社がEVを生産していますが、欧米メーカーが攻勢をかけているのに比べると、やや腰が引けている印象です。
なかでも、トヨタは、次世代エコカーとしてFCVを普及させるべく、昨年12月、価格を約500万円にまで抑えて市販に踏み切りました。さらに、今年1月には、FCVの関連特許5680件を公開するという、異例の策にも出ました。これらは、いわば、FCVのガラパゴス化の予防策といえます。
FCVは、ホンダや日産、VWや現代自動車も開発を進めています。しかし、国内の注目度に比べると、海外の注目はそれほど高くない。むしろ、次々と投入される予定の新型EVが、話題をさらっているわけですよ。日本は、FCVでは、文字通り世界の先頭を走っています。
もっとも怖いことは、日本メーカーがFCVの普及に目を向けているうちに、世界市場でEVが大きな潮流となることです。結果、EVで出遅れた日本メーカーが、グローバル市場で商機を逸することですね。いずれ、FCVの時代は訪れるでしょう。しかし、その技術を先取りしていることを過信せず、世界市場としっかりと向き合うことが求められています。
まあ、トヨタのことですので、ぬかりはないと思いますが、多方面に目を配って、とにかくガラパゴス化だけは避けなければいけませんよね。