最近、町中の外国人が、目に見えて増えました。円安やビザ発給要件の緩和もあって、訪日外国人は増え、昨年、年間1300万人をこえました。政府は、2020年までに、2000万人まで増やす計画です。
これに伴って、対応が追い付かないケースが出てきています。その一つが、通訳案内士、すなわちガイドの不足です。
政府は、通訳案内士を増やそうとしています。しかし、増やそうとするあまり、先だって、通訳案内士の口述試験前に、日本政府観光局の担当者が、採点する試験委員に対して「国策として80%の合格率を目ざす」と発言し、合格基準に達しないガイドが生まれかねないと問題になっていました。
通訳案内士とは、文字通り、外国人観光客を案内する通訳士です。ボランティアなら問題ありませんが、報酬をもらって通訳をするには、国家資格が必要です。英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語の10言語があります。
しかし、現在、登録者は、全部合わせて約1万8000人に過ぎません。うち、東京都が5446人と、3分の1近くを占めます。
2000万人の外国人観光客に対して、通訳士が2万人に満たないのは、どう考えても足りませんよね。
地方創生が叫ばれるなか、地方都市でも、観光産業を目玉として、訪日外国人旅行者を取り込もうと奮闘する都市が多くあります。通訳案内士の不足は、むしろ地方のほうが深刻かもしれません。地域限定通訳案内士や、特区制度活用通訳案内士などの制度はありますが、まだまだ、数は足りていません。
一例をあげれば、毎年人口の3倍以上にあたる30万人もの外国人観光客が訪れる、岐阜県高山市です。先日、高山市を訪れる機会がありましたが、ホテルも、レストランも、温泉も、小さな路地まで、聞きしに勝る外国人の多さ。まさに外国人だらけでしたね。
その高山市は、しかし、通訳案内士が、なんと、英語3人、中国語3人、合わせて6人しかいないといいます。30万人に対して6人では、さすがに厳しいといわざるを得ません。
日本人は、概して親切で「おもてなし」の文化があるといわれます。しかし、日本のことを詳しく知りたい外国人観光客には、やはり、専門的な知識や語学力をもった通訳が必要です。通訳の人数確保だけでなく、旅行者のニーズと通訳のマッチング、少数言語への対応など、通訳をめぐる課題は、たくさんあります。
先にあげた高山市は、11か国語の情報発信に加え、イスラエルからの観光客の急増に合わせ、ヘブライ語の観光案内図を作成しました。さらに、通訳に関しては、案内できる範囲を中心市街地に限定し、市が実施する研修を受けた人材に案内業務を許可する仕組みを、今年度からスタートさせるといいます。また、ボランティア通訳ガイド養成講座も行います。
通訳案内士は、昨年の合格者は1658人でした。このままでは、2020年までに、国家資格者を一気に増やすことは、なかなか難しいでしょう。いかに、外国人観光客のニーズに応えるか。高山市のように、地域が独自の研修やボランティアの養成を行うことは、一つの解決策になるのではないでしょうか。知恵の絞りどころですね。