東芝の新体制は、期待外れの印象です。常識的な範囲にとどまっているといったらいいでしょうか。もっと冒険してもよかったのではないでしょうか。
東芝は18日、室町正志会長兼社長が続投し、社外取締役を現在の4人から7人に増やす新体制を発表しました。
「140年の創業以来最大の危機的状況と認識しています。内部統制、企業風土の改善をし、再発防止に注力します」と、室町さんは、東京港区の東芝本社で開かれた記者会見で語りました。
これまでの東芝の取締役会は、社内12人、社外4人で構成されていました。新体制では、取締役の総数を11人に減らし、社外取締役を7人に増員します。東京理科大学教授の伊丹敬之さんは留任し、新たに、経済同友会代表幹事で三菱ケミカルホールディングス会長の小林善光さんのほか、資生堂相談役の前田新造さん、アサヒグループホールディングス相談役の池田弘一さんを招きます。このほか、元最高裁判事の古田佑紀弁護士、公認会計士の野田晃子氏が加わります。
社外取締役が過半数を占めているとはいえ、不適切会計が起きた時期に取締役を務めていた、室町氏と伊丹氏は留任しています。2人の留任に対して、社内外の一部からは疑問視する声が出ています。当然でしょうね。不正を招いた企業風土を抜本的に変えられるかどうかが問われている矢先にあって、2人の留任は違和感をもたれるのではないでしょうかね。
それから、財界のお歴々の名前が並んでいますが、本当に“経営革新”につながるかどうか。世間から見れば、お歴々を並べて、東芝というブランドを守ろうという感じですかね。また、心ある社員にしてみると、驚きもなければ、新鮮味もないという印象を持つのではないでしょうか。
それより何より、社外取締役の増員が信頼回復の柱になりえるのかという問題もありますね。社外取締役の数を増やしただけでは不十分で、社外取締役が機能しなければ、不正を防ぐことはできないからです。
実際、01年に経営破綻した米エンロンは、17人の取締役のうち15人が社外取締役だったにもかかわらず、簿外債務の隠ぺいをはじめとする不正を阻止できませんでした。社外取締役に過剰な期待は禁物です。
そもそも1562億円の利益水増しが明らかになったのは、外部の目で経営を監視する社外取締役が何の役割も果たせず、コーポレートガバナンスが形骸化していたからですよね。であるならば、数を増やしたからといって、社外取締役が経営のチェック機能を果たせるかどうかということになります。
その意味で、社外取締役がお飾りにならないように、社外取締役の覚悟が問われます。
重要なのは、まず、社外取締役が機能する会社に生まれ変わることができるかどうか。その覚悟なくして、いくら形を整えても、取締役会の監督機能は強化されません。東芝には、この期に至って、“体裁”をとりつくろっている余裕など、まったくないですからね。