ソニーが不動産業を始めると聞いたとき、正直、いったい何を考えているのだろうかと思いました。その全貌が、ようやく明らかになろうとしています。
ヤフージャパンとソニー不動産は、インターネットを通じて個人間で中古マンションの売買ができるサービスを開始しました。昨日、共同記者会見を開き、発表しました。
※ソニー不動産社長の西山和良(左)さんと、ヤフージャパン社長の宮坂学さん(右)
そもそもソニー不動産は、昨年4月に立ち上げられました。2012年に社長に就任した平井一夫さんが進める、SAP(Sony Seed Acceleration Program)の第一弾だったんですね。
当時のソニーは、不調の真っ只中。なぜこんなときに畑違いの不動産業を始めるのかと、首をかしげたのを覚えています。今年7月にヤフーと業務提携し、現在の出資比率はソニー56.3%、ヤフー43.7%です。
今回発表された、新しい不動産売買プラットフォームである「おうちダイレクト」は、従来の日本の不動産取引のあり方に一石を投じる取り組みといっていいでしょう。
「おうちダイレクト」を使えば、マンション所有者は、情報を登録するだけで、自分のマンションの推定価格をリアルタイムに知ることができます。さらに、売出価格、広告掲載など、従来、不動産屋を通さなければできなかったことを、所有者自らが自由に行える。しかも、売却手数料は無料。
買い手は、自分の希望に合うマンションを探し、推定価格を知ることができるほか、「買いたいリクエスト」を、所有者に送ることができます。
ちなみに、買い手から売り手に見学予約が入ると、ソニー不動産が立ち会うなど仲介して実務を担います。買い手は、ソニー不動産に、3%+6万円を支払います。
このサービスの実現のカギは、業界でもっとも高精度という「不動産価格推定エンジン」にあります。ソニーとソニー不動産が開発を手掛けました。これ、AI(人工知能)が入っているんですね。すなわち、ビッグデータを処理し、使うほど査定精度が高まります。
ソニーのAIといえば、真っ先に浮かぶのはロボット犬「AIBO」です。ソニーは、AI開発の先駆者的存在でした。今回のシステムも、「AIBO」やプレイステーションに連なるソニーが誇るAI技術があるからこそ、実現したわけです。ここに、ソニーが不動産業を手掛ける必然性があります。
会見の席上、ヤフイージャパン社長の宮坂学さんは、「ディスラプター(他業界から死角をついて参入しシェアを奪う戦術)としてやりたいわけではございません。マンションという、生活者にとって大きな資産を売買する際の選択肢を増やしたいという思いがあります」と語りました。
とはいえ、宮坂さんは、「マンションの流通革命に挑戦したい。プロしかできなかったことを、インターネットやテクノロジーの力を使い、個人が手のひらできるようにするというパワーシフトを起こしたい」とも語りました。
これは、すこぶる興味深い挑戦であることは間違いありません。が、果たして業界に大きな風穴をあけることができるのでしょうか。まだ、結論は出せませんね。