日産自動車は11月22日、部品子会社のカルソニックカンセイの保有株式41%を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に約2000億円で売却すると発表しました。これは、何を意味するのでしょうか。
カルソニックカンセイは、2000年にカルソニックとカンセイが合併して発足、2005年に日産の連結子会社になりました。日産系列最大のサプライヤーとして、主に日産向けに空調システム、コンプレッサー、排気システムなどの製品を納入しています。日産向けの売上げは、全体の約8割を占めます。
日産にとって、カルソニックカンセイは重要なパートナーです。カルソニックカンセイが日産生産方式(NPW)を取り入れ、生産の仕組みを進化させてきたことからも、両社の密接な関係ぶりがうかがえます。
であるにもかかわらず、なぜ、日産は重要なパートナーであるカルソニックカンセイ株を売却したかということですよね。
「日産から独立して、競争力をつけてもらいたいからです」
日産の幹部は、カルソニックカンセイ株の売却理由について、そのように説明しました。
ご存じのように、自動車業界は現在、車両の電動化や自動運転、コネクティッドカーなど、大きな環境変化のなかにあります。
カルソニックカンセイが日産の傘の下にあっては、新しい技術の波に取り残される可能性がある。日産は、カルソニックカンセイの競争力を高めるため、あえてカルソニックカンセイ株を手放したというわけですね。
今後の行方ですが、KKRは2017年2月にTOBを実施し、日産の保有分を含めたカルソニックカンセイの全株式の取得を目指します。カルソニックカンセイは、東証一部を上場廃止となり、KKRの傘下で新たな成長戦略を描くことになります。
プライベートエクイティの運用を行う投資会社のKKRは、いずれ、投資した株式を売却して収益を確保することになるでしょう。いわゆるエグジットですね。
その時点で、カルソニックカンセイが次の成長に向けて、どこまで価値を創造できているか。例えば、自動運転やコネクティッドカーなどの領域にどこまで対応できるようになっているかが期待されるところですね。
KKRのもとで、カルソニックカンセイが競争力を高めることができれば、日産にとっても大きなメリットがあるのはいうまでもありません。
そうなったとき、再度、日産がカルソニックカンセイを傘下に収めるという道筋がないわけではありませんよね。
自動車業界は新たな時代に向けて走り出しています。自動車部品メーカーは自らの強みを見定め、より競争力を強化しなければ、生き残っていくことはできません。
その意味で、日産によるカルソニックカンセイ株の売却は、サプライヤーの競争力を高めるための極めて有効な選択肢の一つと見ることができるでしょう。