自動車産業は、いま、大きく転換しつつあります。どういうことでしょうか。
ご存じのように、次世代環境対応車。自動運転技術。さらに、コネクテッド・カー、すなわち「クルマのIoT化」。製造工程では、IoTやロボティクスの進化によって大きな変化が起きています。
さらに、カーシェアなどクルマの使われ方も変化しています。自動運転が当たり前の時代になれば、移動中の車内での過ごし方など、クルマをもつ意味、楽しみ方、存在意義、すべてが大きく変化します。
刻一刻と進む市場の変化に対応するため、自動車メーカー各社は、知恵をしぼっているんですね。
日産自動車は、今日、アフターセールスの新戦略を発表しました。
背景には、冒頭に触れた自動車市場の変化があるのは、断るまでもありません。
例えば、日産の場合、部品の削減や定期メンテナンスの回数の削減を進めていますが、これによって、ディーラーの売上高が下がります。
さらに、自動ブレーキなど安全技術の進化によって、自動車事故は10年前の4割前後にまで減っています。その結果、交換部品の需要が低下している。今後、事故はますます減るのは間違いありませんから、定期メンテや交換部品で稼ぐという、アフターセールスのビジネスモデル自体を、当然のことながら、変えていかなければいけません。
「自動車業界はまさに転機を迎えています。もともとクルマは単なるハードウェアとみなされていましたが、いまではコネクテッド・カー革命のまさに先端に位置しています」
と、日産常務執行役員でグローバルアフターセールス事業などを担当するケント・オハラさんはコメントしました。
日産は、アフターセールスの新戦略として、大きく二つを打ち出しました。
一つは、コネクテッド・カーによる革命です。
新車に加え、現在世界に約4000万台ある既存の日産車の3割を目標に、TCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)を搭載してクルマから情報を収集し、サービスを提供します。
「10年前は想像もしなかった機能が実現するようになるのです。例えば、スマートフォンやタブレットでクルマをコントロールできるようになります。いつでもクルマの健康状態を把握できます。追跡システムにより、クルマと乗員の安全、セキュリティをいつでも確認することができます」(オハラさん)
日産は17年以降、日本とインドを皮切りに、コネクテッド・カーのサービスをディーラーオプションで展開する予定です。成熟市場から新興市場まで、すなわち、インフィニティからダットサンまで、すべての顧客が対象というわけです。
二つめは、パーソナライゼーションです。
仏フラン工場で生産し、来年3月発売予定の新型「マイクラGen5」から、パーソナライゼーションを一気に拡大します。具体的には、10色、2つのエンジンタイプ、125のバリエーションの組み合わせが可能です。
さらに、今後、車載用デジタルアクセサリーなどを開発し、「ハイパー・パーソナリゼーションとして実現することを目ざす」(オハラさん)といいます。
コネクティビティ、パーソナル化、アクセサリーの3つによる収益は、現在、アフターセールス事業全体の収益の1ケタに過ぎませんが、22年には25%にまで高めるといいます。
もっとも、コネクテッド・カーのサービスは、多少の違いはあるにせよ、トヨタがレクサスやトヨタ「プリウス」などですでに提供を始めています。EV(電気自動車)に出遅れたトヨタに対して、コネクテッド・カーに出遅れた日産、というところでしょうかね。
冒頭にあげたように、自動車メーカーの“戦線”は、ハードウェアに加え、ソフトウェア、カーシェアなど新サービスと、どんどん拡大しています。自動車産業では、いま、とてつもない大変化が起こっているんですね。
自動車メーカーは、もはや単なる製造業ではありません。サービスビジネスおよびソリューションビジネスを手掛けないと生き残っていけないんですね。
いかなる戦略をもって、どこに切り込むのか。各戦線の攻防から目が離せませんね。