トヨタ自動車は12月1日、電気自動車(EV)の戦略立案や開発を担当する社内ベンチャーを立ち上げました。
豊田章男社長の直轄組織です。EVに消極的だったトヨタが、いよいよ量産を視野に入れた開発に本腰を入れる姿勢を示したといっていいでしょう。つまり、EVシフトに舵を切ったといえます。
社内ベンチャーのEV事業企画室を統括するのは、豊田章男氏のほか、副社長の加藤光久氏、寺師茂樹氏です。室長には、昨年12月に発売されたハイブリッド車(HV)4代目「プリウス」の開発を担当した豊島浩二氏が就きます。
このほか、EV事業企画室には、アイシン精機、デンソー、豊田自動織機からの出向者も加わります。
11月18日のブログでも書きましたが、トヨタがここにきて、EVに本腰を入れる背景には、カルフォルニア州のZEV規制や中国のNEV規制など、世界的な環境規制の強化があります。トヨタは究極のエコカーとしてFCVの開発を優先させてきましたが、FCVの本格的な普及はまだまだ先のことです。
すでに、フォルクスワーゲン、ダイムラー、オペル、ルノーなど、欧州の自動車メーカーはEVに力を入れています。このままFCVの普及を待っていては、世界の流れに取り残されます。
しかも、航続距離の短さや充電時間の長さ、充電ステーションの未整備など、EVのデメリットはここにきて、大きく改善しているんですね。
トヨタは、これまでFCVに巨額の投資をするとともに、技術を蓄積してきました。それを考えると、EVへの本格参入は、大決断といっていいでしょうね。
思い出されるのが、薄型テレビにおける「液晶vsプラズマ」の戦いです。
当初、大画面で高精細画像が楽しめるプラズマテレビは、20インチから32インチ程度が限界の液晶テレビに対して、圧倒的な優位性を誇っていました。
ところが、あっという間に液晶テレビの技術革新が進んだんですね。
プラズマテレビを開発するパナソニックは、4000億円以上を投資して、尼崎に3棟の工場を建設していました。プラズマが劣勢に立たされてからも、あくまでもプラズマに固執しつづけ、それは後々までパナソニックの業績に大きく響きました。
技術のトレンドを見据えた、的確かつスピーディーな決断が、その後の経営の行方を左右することは、いまさら指摘するまでもありませんね。
そう考えると、トヨタがここにきてEVに本格参入する意思を固めたことは、大きな意味があります。
EVの世界販売台数は15年に約33万台。全体の0.4%にすぎません。EVの比率が一気に増えるのは、2025年といわれています。競争はこれからです。
EVへの本格参入で、トヨタはいよいよ、ハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)の全方位で次世代エコカーを手掛けることになります。
トヨタが、次世代エコカーにおいて全方位戦略をとりつつ、どこまでEV開発の遅れを取り戻すことができるか。それは、今後のエコカー戦争の行方を占ううえでも重要なカギになるでしょう。