テルモといえば、北里柴三郎博士らを発起人とする体温計メーカーにルーツをもつ、1921年創業の歴史ある企業です。いまや、国内トップレベルの医療機器・医薬品メーカーですよね。カテーテル治療分野では世界4位を誇ります。
一昨日、2021年度までの今後5年間における中長期戦略を発表しました。
具体的な数値目標は発表しなかったものの、売上高は、1桁後半の成長、のれん償却費等を除いた調整後営業利益は2桁成長を目指すとしました。
テルモは過去10年間に売上、純利益(のれん等償却前)とも2倍以上と、順調に成長しています。
中長期成長戦略として、三つの柱を立てました。①グローバルでは選択と集中により、カテーテル、脳血管、ドラッグ&デバイス、血液治療などの競争力のある分野に注力する。②国内市場においては、トップ企業のポジションをいかし、総合力を発揮する。そして、③イノベーションの推進です。
※テルモ社長の新宅祐太郎さん
代表取締役社長CEOの新宅祐太郎さんは、次のように力を込めました。
「単に成長するだけではなく、今後の成長に向けた基盤づくりを進めてきました。グローバル経営体制への移行、世界中に広がった事業をいかに適切に収益管理して業績向上につなげるかというインフラの整備、また、イノベーションの拠点整備をしてきました」
もっとも、医療機器業界は、米ジョンソン・エンド・ジョンソン、GE、独シーメンスなど欧米企業が圧倒的な強さを誇ります。
国内トップレベルのテルモさえ、世界では20位に入れるかどうか。超強豪がゴロゴロいるなかで、それらの企業と伍し、さらにはグローバルリーダーとなるために、M&Aによる拡大がポイントになるのは間違いありません。
テルモは先だって、米セント・ジュード・メディカル社と米アボット社から、血管治療関連の事業の一部を買収しました。中長期成長戦略①に掲げた通り、もともと強い心臓血管事業をさらに強化して、海外市場を拡大する戦略です。
引き続き、M&Aには積極的な姿勢を示しています。海外の売上高は、現在の64%から、21年度に70%にまで高める方針です。
M&Aと並んで重要なのが、R&Dですね。イノベーション推進にも力を入れている。医療機器業界に限らず、近年、耳にすることが増えたのが「オープンイノベーション」です。競争領域と協調領域を切り分け、自社開発とオープンイノベーションを両立する。
テルモは、心不全や脳梗塞、再生医療などの分野で、社会的インパクトの大きい「未来医療」を創出するとしています。21年度までに、研究開発費は2桁増、開発者は現在の1200人を4割増にする計画です。
グローバル時代の今日、国内トップに甘んじていては生き残れない。M&Aも、イノベーションも、思い切って挑戦し、世界で生き延びていく“覚悟”が問われるんですね。